189 ネックレスのオークション

榊蒼真は背が高く脚が長く、無表情で歩いてきた。スーツを着て、襟元のボタンを2つ外していて、藤丸詩織の記憶にある従順な印象とは違い、今は少し不羈な雰囲気が加わっていた。

冷淡さと不羈さは相反するものだが、榊蒼真の中では、それらが見事に調和していた。

客席の女性たちは榊蒼真の姿を見て、思わず口を押さえて驚きの声を上げた。

藤丸詩織はステージ上の榊蒼真を見つめ、誇らしい気持ちでいっぱいだった。かつての少年が今やこんな大きな舞台に立ち、多くの人々に愛されているのを見て、特別な喜びを感じていた。

桜井蓮はその反応を聞きながら、表情が次第に険しくなっていった。特に藤丸詩織が榊蒼真を見つめ、口角が上がって微笑んでいる様子を見て、さらに気分が悪くなり、膝の上の手を強く握りしめた。