この展示会では、商品は展示されるだけでなく、オークション形式で販売され、最高額の入札者が落札することになります。
藤丸詩織は榊蒼真の注意に対して、頷いて「はい!」と答えた。
榊蒼真はそれを見て、ようやくステージの裏手へと向かった。
桜井蓮は少し離れた場所に立ち、藤丸詩織と榊蒼真のやり取りを見ながら、瞳が暗く沈んでいった。
榊蒼真が去った後、大股で藤丸詩織の方へ歩み寄った。
藤丸詩織は隣の気配を感じ、不思議そうに顔を上げて見ると、桜井蓮の姿を見て、不快感を覚えた。
藤丸詩織は視線を戻し、冷たい声で尋ねた。「何かご用でしょうか?」
桜井蓮は藤丸詩織の冷たい態度を見て、先ほどの彼女が榊蒼真に向けて見せた楽しそうな笑顔を思い出し、特に不愉快な気持ちになった。
桜井蓮は藤丸詩織の隣の席に座り、前方を見つめながら言った。「私がここにいるのは、あなたに会いに来たわけじゃないでしょう?」
藤丸詩織は眉をしかめ、桜井蓮を一瞥して尋ねた。「それはあなたの席なの?」
展示会場の各席には、名前の書かれたタグが貼られていた。藤丸詩織は先ほど気付かなかったが、直感的にこれは桜井蓮の席ではないと感じていた。
桜井蓮は椅子に背もたれかかり、確信に満ちた口調で答えた。「もちろんです。」
藤丸詩織は桜井蓮が指を擦り合わせているのを見て、瞳を細めた。これは彼女が考え事をする時の習慣的な仕草だった。
藤丸詩織は淡々と言った。「椅子の背もたれの名前を見せていただけますか?」
桜井蓮は即座に拒否した。「だめです!」
拒否した後、自分の態度が激しすぎたことに気付き、改めて口を開いた。「この席は私のものです。なぜあなたに見せる必要があるのですか?もし信じられないなら、後で誰かがこの席を求めに来るかどうか見ていればいいでしょう!」
藤丸詩織は桜井蓮の断固とした様子を見て、自分の勘違いだったのかもしれないと疑い始めた。
藤丸詩織がそう疑問に思った瞬間、周防司の声が耳に届いた。
周防司は大股で近づいてきて、桜井蓮に苛立ちながら言った。「なぜここに座っているんですか?」
桜井蓮は表面上は落ち着いた様子を装っていたが、指を擦り合わせる動作は更に速くなっていた。周防司を見て反問した。「何か問題でも?」