210 許してください

呉羽真は自責の念に駆られて言った。「お嬢様、昨夜窓の鍵をかけ忘れたのは私の不注意です。もしきちんとしていれば、藤丸知佳様が逃げ出すことはなかったはずです。今すぐ人を集めて藤丸...」

藤丸詩織は首を振り、口を開いた。「必要ない。昨夜は私が彼女が窓から出て行くのを見ていたから」

呉羽真は藤丸詩織の意図的な采配だと気づき、少し安堵した。

藤丸明彦と竜崎美奈の二人は、藤丸知佳が戻ってきたのを見て、驚きのあまり固まってしまった。

竜崎美奈は藤丸知佳を抱きしめ、しばらくしてから離れ、尋ねた。「知佳、帰ってきたのね。ママ、とても会いたかったわ。あの藤丸詩織という悪女が帰してくれたの?」

竜崎美奈の興奮に比べ、藤丸知佳の感情は全く動揺を見せず、淡々と答えた。「私が自分で逃げ出してきたの」