209 お前の意思じゃない

橘譲は全ての事情を理解し、本当に藤丸詩織に影響がないことを確認すると、緊張していた心がようやく完全に解きほぐれた。

橘譲：「詩織、もう若宮玲奈に甘くしてはいけない。今すぐ彼女を干すように手配する！」

藤丸詩織は橘譲を制し、彼の不思議そうな目の前で、口を開いた：「私はもう彼女を干しました。」

橘譲：「じゃあ、この周防剛の会社を買収してやる！」

橘譲はアイデアが浮かんだ瞬間に行動しようとしたが、そのとき携帯が鳴り、画面に二つのニュース通知が表示された。

#周防グループ資金破綻、社長周防剛が破産を宣言。

#桜井グループが周防を買収。

橘譲は顔を曇らせ、思わず愚痴った：「飛行機の中にいなければ、国内の最新ニュースがすぐ分かったのに。絶対桜井蓮より早く動けたのに！」

藤丸詩織は頷き、少し残念そうに言った：「周防は発展の見込みが良かったのに、どうして桜井蓮に先に買収されてしまったんでしょう？」

橘譲は探るように言った：「桜井蓮は君のためにやったんじゃないかと思う。」

藤丸詩織は驚いた目で橘譲を見て、言った：「お兄さん、どうしてそう思うんですか？」

橘譲：「桜井蓮がこのタイミングで周防を買収したのは、絶対君のためだよ。だって桜井家はこれまでエンターテインメント業界に全く手を出してなかったんだから。」

藤丸詩織は否定した：「そんなはずありません！きっと彼も周防の将来性を見込んだんだと思います。」

橘譲はこれを見て、もう説明するつもりはなかった。結局、彼も桜井蓮のために良いことを言いたくなかった。藤丸詩織が再び桜井蓮を好きになることを防ぐためだ。

橘譲は突然榊蒼真のことを思い出し、静かに尋ねた：「詩織、榊蒼真のことをどう思う？」

榊蒼真？藤丸詩織は頭の中で真剣に考えた。

榊蒼真はずっと彼女に優しかった。彼女が落ち込んでいるときは、なんとかして彼女を笑わせようとし、いじめられているときは、彼女のために立ち向かってくれた。

そこで藤丸詩織は言った：「とても良い人です。可愛くて、私のことを一番に考えてくれて、一緒にいると気が楽です。とても素敵な弟みたいな存在で、大好きです！」

橘譲は頷き、目を伏せた。

詩織は本当に榊蒼真を弟としか見ていないのだろうか？

それに好きになった桜井蓮と榊蒼真、この二人のタイプは、どうしてあの人と全く似ていないのだろう？