藤丸詩織は相槌を打ちながら口を開いた。「でも、お兄さんは海外にいるから、全然見えないわ。それに、お兄さんが私のことを好きになるはずがないし、もしお兄さんが陰でこんなことを言っているのを知ったら、きっと殴られるわよ」
久我湊は心の中で再び自分の兄のために黙祷を捧げた。
相良健司は電話に出た後、病室の外へ足早に向かったが、電話からは声が聞こえず、再び携帯を見ると、画面がホーム画面に戻っていた。
相良健司は少し戸惑い、「さっきの着信は気のせいだったのかな?」
相良健司は通話履歴を確認すると、聞き間違いではなかったことがわかった。確かに桜井蓮からの着信があったが、通話時間はわずか十数秒だった。
もしかして間違い電話だったのか?
相良健司が折り返し電話をかけたが、桜井蓮は切ってしまった。
桜井蓮はこの時、暗い表情でプライベートジェットに乗り込んでいた。
さっき相良健司に電話をかけたのは、藤丸詩織が弁護士以外に何か助けが必要かどうか尋ねてもらおうと思ったからだが、電話が繋がった途端、藤丸詩織にまた新しい追っかけができたという話を耳にしてしまった。
客室乗務員:「桜井社長、川崎市まであと1時間です。何かございましたら、お申し付けください」
相良健司は何度か電話をかけ直したが、桜井蓮が出なかったため諦めざるを得なかった。病院を出ようとした時、突然診察室から声が聞こえてきた。
長谷司:「名医は本当にすごかったです。さっきあの少女の手術をされた様子を思い出すと、まだ興奮が収まりません。あのような医術は、私の一生をかけても到達できないかもしれません」
「まあ、そんなにすごいんですか?長谷先生は当院でも指折りの腕前なのに、それでも及ばないなんて」
「そうそう、手術後の子供の回復具合はどうですか?後遺症とかないんですか?」
長谷司は笑いながら言った:「今のところ全く問題ありません。これからもないと思います。私の憧れの先生の実力を信じていますから!」
相良健司は「名医」という言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴り、ドアに身を寄せて、重要な情報を聞き逃さないようにした。
医師たちが話している名医が、自分が知っている名医と同一人物なのかどうか気になった。