300 温水修の居場所を突き止める

温水修に美音の親権を取り戻すのを手伝うという件については、彼女の頭から完全に抜け落ちていた。

ただ、藤丸志穂は顔を上げた時に桜井蓮が自分を見ていることに気づき、驚いて足早に立ち去った。

桜井蓮は藤丸志穂の去っていく後ろ姿を見つめ、表情は暗く、目には嘲りが満ちていた。やはり表面的な親子関係に過ぎないのだと。

藤丸詩織は時計を見て、たった10分しか経っていないことに気づいた。つまり、藤丸志穂の言う愛情はたった10分の価値しかないということだ。

藤丸詩織は藤丸美音の方を向き、優しく尋ねた。「美音、頭まだ痛い?」

藤丸美音は嬉しそうに答えた。「痛くないよ。ちょっとかゆいだけ。看護師さんが、それは良くなってきてる証拠だって。良くなったら退院できるんだって!」

藤丸詩織は頷いて笑顔で言った。「そうね、美音はもうすぐ退院できるわ。そうしたらお姉ちゃんと遊びに行って、美味しいものを食べたり、お洋服を買ったりしましょう…」