301 嫉妬じゃないならいい

藤丸詩織は桜井蓮がずっと黙っているのを見て、思わず口を開いた。「聞きたいことがあるなら、直接聞いてよ」

桜井蓮は唇を噛んで、前方の道を淡々と見つめながら、さも何気なく尋ねた。「君は今まで何人の彼氏がいたの?」

藤丸詩織は眉をひそめ、不思議そうに桜井蓮を見た。最近なぜこんな奇妙な質問ばかりするのか、そして彼女に対する態度もおかしいことが理解できなかった。

桜井蓮は藤丸詩織が答えないのを見て、続けて言った。「海外にはたくさんの男性が君を追いかけていたんだろう?きっと多くの人と付き合ったんじゃないの?」

桜井蓮はずっとこの質問をしたかったのだ。今やっと口に出せて、胸に溜まっていたもやもやが少し晴れた気がした。

藤丸詩織は複雑な表情で桜井蓮を見つめ、不思議そうに尋ねた。「その質問、そんなに重要?」

桜井蓮は歯を食いしばって答えた。「重要だよ!」

藤丸詩織は少し考え込んだが、大学時代のことを思い出せず、こう答えた。「覚えていないわ。付き合っていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

桜井蓮は藤丸詩織がごまかしているように感じた。だって当事者なのに、恋愛経験があるかどうかすら分からないなんてありえないだろう?

桜井蓮は顔を曇らせ、冷たい声で言った。「覚えていないのは、たくさんの人と付き合ったからじゃないの?」

藤丸詩織には桜井蓮がなぜこれにこだわるのか理解できなかった。

彼女は運転中の桜井蓮の方を向いて、そっと尋ねた。「私の恋愛歴をそんなに気にするってことは、もしかして嫉妬してるの?」

桜井蓮は心が空っぽになったような気がして、表情が固まった。しばらくして不自然に答えた。「考えすぎだよ。僕が君のことで嫉妬するわけないだろう!」

藤丸詩織は気にせず肩をすくめ、スマートフォンに目を落として、例の不良たちの調査を続けた。

桜井蓮は藤丸詩織の様子を見て、思わず言った。「たとえこの世界に君一人しか女性がいなくなっても、僕は君のことなんか好きにならないし、嫉妬なんてするわけがない!」

藤丸詩織はさらっと相づちを打った。結局、桜井蓮が水野月奈のことしか好きではないということは、彼女が誰よりもよく分かっていたから。