302 鉄棒

数人が騒ぎながら手を出そうとした時、藤丸詩織は先に飛びかかってきた男を見て、足を上げて蹴り飛ばした。

後ろにいた数人の男たちは、地面に蹴り倒された仲間を見て、一瞬呆然としたが、我に返ると、お互いに目を合わせ、意思を確認し合った。

「今から行くか?」

「行こう!」

「俺たちこんなに大勢いるんだ。この女に勝てるはずだ。」

……

数人が決意を固めると、一斉に突っ込んでいった。

桜井蓮は藤丸詩織の前に立ちはだかった。

皆は桜井蓮を見て、数秒ためらったが、最後には勇気を振り絞って突っ込んでいった。

桜井蓮は身のこなしが素早く、あっという間に数人を地面に叩きつけた。

賭場にいた手助けしようとしていた人々は、この惨状を見て、誰一人として声を上げる勇気もなく、ただ黙って自分の存在感を薄めようとした。

藤丸詩織は桜井蓮というツールがこれほど頼りになるとは思わなかった。賞賛の目で彼を見つめた。

桜井蓮は藤丸詩織の視線に気づくと、思わず口角が上がったが、足にかける力はさらに強くなった。

桜井蓮に踏まれている男は思わず悲鳴を上げ、痛みを堪えながら尋ねた。「お前ら誰の手下だ?誰に言われて賭場に喧嘩を売りに来たんだ?」

藤丸詩織は冷ややかに言った。「誰にも言われてない。賭場に喧嘩を売りに来たわけじゃない。人を探しに来ただけよ。」

皆は人探しだと聞いて、心の中でほっとし、そして不思議そうに尋ねた。「人探し?誰を?」

藤丸詩織:「温水修よ。」

温水修?

彼らはもう殴られたくなかったので、藤丸詩織の言葉を聞くと、すぐに追従するように言った。「はいはい、早く連れて行ってください。もう殴らないでください!」

そう言いながら、周りを見回し、温水修の姿を見つけると、すぐに口を開いた。「温水修は角にいます。」

温水修は、長年の賭博仲間が躊躇することもなく、自分の居場所を暴露したことに驚いた。

温水修は怒りの目で数人を睨みつけた。

賭博仲間たちは誠実な目で藤丸詩織を見つめ、こう言った。「お嬢さん、早く温水修を連れて行ってください。もう私たちを殴らないでください!」

藤丸詩織は頷き、後ろの桜井蓮に目配せをして、先に賭場を出た。

桜井蓮は合図を理解し、温水修の側に行って、テーブルの脚にしがみついている温水修を引っ張り上げ、賭場から引きずり出した。