藤丸詩織は展望台から事務所に戻ると、榊蒼真に笑顔で尋ねた。「海外のイベントは終わったの?」
榊蒼真は目を輝かせながら藤丸詩織を見つめ、素直に頷いて答えた。「はい、終わりました」
榊蒼真は先ほどの展望台での出来事を思い出し、心配そうに尋ねた。「姉さん、あの…」
藤丸詩織は榊蒼真の言葉が終わる前に、その意図を理解して笑いながら言った。「大丈夫よ、私は影響を受けていないわ。後で処理してもらえばいいだけだから」
榊蒼真は安心したが、次の瞬間に電話を受けた。
藤丸詩織は榊蒼真が電話を切った時の表情があまり良くないのを見て、不思議そうに尋ねた。「どうしたの?」
榊蒼真は唇を噛んで、口を開いた。「姉さん、さっきの出来事がネットに投稿されました」
藤丸詩織はトレンド検索を開き、タイトルを見て眉を上げ、クリックすると動画が表示された。
動画には水野月奈が飛び降りようとする場面があり、その後、彼女が水野月奈を殴る場面が映っていた。
彼女の反論の言葉や暴力の理由は、すべて切り取られていた。
榊蒼真は藤丸詩織がコメント欄を見ようとするのを見て、急いで手で遮った。「姉さん、見ないで。彼らは事実を知らないから、たくさんの中傷を書いています。気分を害さないでください」
藤丸詩織は冷静に言った。「大丈夫よ、私はあなたが想像しているほど脆弱じゃないわ。言葉だけで打ちのめされたりしないから。ただ、その中に工作員がいないか確認したいだけよ」
榊蒼真はこれを聞いて、ようやく手を引っ込めたが、視線は常に藤丸詩織に向けられ、彼女の感情の変化を観察していた。
藤丸詩織は冷静にコメントを見ながら、思わず感心して言った。「三年前の出来事まで掘り起こされて、こんなに多くの推測まで。今時のネットユーザーは本当に才能があるわね」
榊蒼真は藤丸詩織が本当に影響を受けていないのを見て、心の中でほっとしたが、これらのコメントを見ているうちに表情は悪化していった。怒りを抑えながら言った。「姉さん、今すぐ広報チームにこの件の対応を指示します」
藤丸詩織は頷いた。
榊蒼真は藤丸詩織の承諾を得ると、すぐにチームに電話をかけ、炎上を抑えるように指示した。