香月蛍は断言するように言った。「あなた、絶対にカンニングしたわ!」
香月蛍の言葉に対して、藤丸詩織が答える前に、コンテストの参加者たちが我慢できずに口を開いた。
「香月さん、証拠を示して発言してください」
「さっき美人お姉さんは私たちみんなの目の前で刺繍を完成させたのに、どうしてカンニングできるんですか?」
「もうそんな年齢なんだから、自分の技術が及ばないという事実を受け入れるべきです。他人が作品を完成させたら、すぐに中傷するなんて」
……
香月蛍は周りの言葉に徐々に頭を下げたが、それでも強がって言った。「彼女の刺繍の制作が速すぎるわ。あなたたちが疑わないはずがないでしょう!」
香月蛍の言葉を聞いて、皆は一瞬沈黙した。
椎名妙は「私たち審査員はその場にいましたから、彼女がその場で刺繍したことを証明できます」と言った。
他の審査員も一斉に頷き、椎名妙の言葉に同意を示した。
香月蛍は軽蔑した表情を浮かべた。
藤丸詩織はそれを見て、淡々と言った。「もし彼らが私をかばっていると思うなら、監視カメラを見ることもできますよ」
司会者は機転を利かせて、すぐに監視カメラの映像を用意するよう指示した。
香月蛍は藤丸詩織のそんな確信に満ちた様子を見て、心が冷えていったが、それでも期待せずにはいられなかった。藤丸詩織は表面上は落ち着いているふりをしているだけで、実は内心とても慌てているのかもしれない。
香月蛍はそう考えて言った。「監視カメラの映像があるなら、見てみましょう」
藤丸詩織は司会者に頷き、そして監視カメラの映像が大画面に映し出された。
香月蛍は顔を上げて見つめ、まばたきすらできないほど集中していたが、見れば見るほど、彼女の顔色は青ざめていった。
藤丸詩織は終始刺繍に集中しており、風景が彼女の動きに合わせて少しずつ現れていき、カンニングする時間など全くなかった。
気づかないうちに監視カメラの映像は終わった。
藤丸詩織は眠そうにあくびをし、香月蛍に向かって尋ねた。「証拠はあなたの目の前にありましたが、まだ私がカンニングしたと思いますか?」
香月蛍は両手を握りしめ、藤丸詩織を鋭く睨みつけ、歯を食いしばって言った。「きっと監視カメラの映像を細工したのよ。そうでなければ、なぜ監視カメラの映像を見せようと思いつくの?」