351 もう一度救う

周防司は藤丸詩織の去っていく背中を見つめ、顔を曇らせている桜井蓮の方に目を向けると、最後に周防楽に小声で言った。「家に帰ろう」

周防楽は急いで頷いた。「うん」

桜井蓮は周防司に向かって冷ややかに尋ねた。「怒らないの?」

周防司は歩みを止め、静かに口を開いた。「愛とは相手を思いやることだ」

桜井蓮は嘲笑うように笑った。「愛とは独占だ。お前は単に藤丸詩織のことを十分に愛していないだけだ」

周防司も微笑みを浮かべ、桜井蓮と言い争うことなく言った。「愛が何であれ、もし本当に藤丸詩織のことが好きなら、追い方を変えた方がいい」

桜井蓮は周防司の去っていく背中を見つめ、しばらくして視線を戻し、先ほどの彼の言葉を思い返して可笑しく感じた。

人を愛するのに、どうして相手が他人と一緒にいるのを見ていられるだろうか。