352 ファッションショー

水野琳は淡々と口を開いた。「命の恩人という恩が薄れたのなら、もう一度救えばいい。彼が同じ経験をすれば、あの時の光景を思い出すはず。桜井蓮は義理堅い人だから、きっとまた優しくしてくれるわ」

水野月奈は一瞬止まり、ぼんやりと言った。「もう一度救うんですか？」

水野琳は頷き、断固として言った。「そう！」

水野月奈は少し怯えながら、小声で言った。「でも、前に彼を救ったのは私じゃないんです。今どうすればいいか分かりません」

水野琳は、自分のように賢い人間の親戚がなぜこんなに愚かなのか理解できず、冷たい声で言った。「私が全部手配するから、その時はただ言われた通りにすればいいの」

水野月奈は急いで頷き、興奮して言った。「ありがとうございます、おばさま！」

水野月奈は以前、自分が桜井蓮の命の恩人だと言う時、いつも心の中で後ろめたさを感じていた。でも今回本当に彼を救えば、それは本当のことになる。そうすれば、彼の前で胸を張れるようになるはず。

桜井雨音は中年女性の声は聞き分けられなかったが、水野月奈の声は特によく分かった。彼女の言葉を聞いて、完全に衝撃を受け、急いで手で口を押さえ、驚きの声を抑えた。

水野月奈はお兄さんの命の恩人ではなかったのだ！

桜井雨音は見つかることを恐れ、急いで息を殺して立ち去った。

……

藤丸詩織は榊蒼真を見て尋ねた。「神崎湊のここ数日の練習はどう？」

榊蒼真は少し考えてから、真剣に答えた。「練習にはとても真面目に取り組んでいて、上達も早いです」

藤丸詩織は満足げに頷いた。

榊蒼真の要求は非常に高いので、神崎湊が彼の認めを得られたということは、間違いなく実力があるということだ。

藤丸詩織は口を開いた。「日曜日にファッションショーを開催しようと思うんだけど、その時あなたと神崎湊に参加してもらいたいんだけど、大丈夫？」

榊蒼真は頷き、笑顔で答えた。「もちろんです」

榊蒼真は優しく呼びかけた。「お姉さん」

藤丸詩織は顔を上げ、不思議そうに尋ねた。「どうしたの？」

榊蒼真は少し考えてから、小声で尋ねた。「お姉さん、今日どうして桜井蓮たちと遊園地に...言いにくければいいんですが、ただ少し気になって、聞いてみたかっただけです」