374 雨音と月奈の協力

水野月奈は桜井蓮の去っていく後ろ姿を見つめながら、彼の言葉を信じることができず、やはり桜井蓮は藤丸詩織を探しに行くのだと思っていた。

水野月奈は歯を食いしばり、怒りが込み上げてきて、病院にいられなくなり、すぐに退院手続きを取った。

この病院の医師は彼女に買収されており、桜井蓮には彼女の怪我が重症だと伝えていたが、実際は表面的な傷に過ぎなかった。

水野月奈は、病院を出たとたんに桜井雨音に行く手を阻まれるとは思わなかった。

桜井雨音は腕を組み、鋭い眼差しで水野月奈を睨みつけ、冷たい声で言った。「あなたのような厚かましい人が兄を騙していたなんて、やっぱりそうだったわ!」

水野月奈は一瞬動揺し、周りを行き交う人々を見回しながら、心の中は不安でいっぱいだった。

彼女は姿勢を低くして、懇願するように言った。「桜井さん、何かお話があるなら、人目につかないところでお願いできませんか?こんなに人がいるところでは…」

桜井雨音は呆れた様子で、嘲笑いながら言った。「私を陥れた時は、恥ずかしい思いをすることなんて考えもしなかったくせに?よくも兄に真実を話させないようにして、私を叱られるはめにまでしたわね。許すと思う?」

彼女は怒りのあまり、水野月奈を殴ろうと手を上げた。

水野月奈は殴られた時の痛みを思い出し、目を逸らしながら、急いで彼女の手を掴み、機を見て素早く言った。「忘れないでください。この件には私だけでなく、桜井家も関係しているんです。」

桜井雨音の動きが止まり、困惑して尋ねた。「うちの家とどんな関係があるの?」

水野月奈は「静かな場所で話しましょう」と言った。

桜井雨音は水野月奈を数分間見つめた後、彼女が何もできないと判断し、静かなカフェに連れて行き、個室を取ってから口を開いた。「さあ、何を話したいの?」

水野月奈は桜井雨音が自分にだけコーヒーを注文したのを見て、瞳の奥に暗い光が走った。将来、桜井蓮と結婚して義姉になったら、必ずこの方法で彼女を辱めてやろうと思った。

水野月奈は心の中の怒りを抑えながら、小声で言った。「確かに私はあなたたちを騙しました。でも、それは仕方なかったんです。私は…」

桜井雨音は冷笑を浮かべた。

水野月奈は深く息を吸い、改めて口を開いた。「私たち、実は協力できると思うんです。」