372氷川静、自ら料理を作る

藤丸詩織は氷川静が持ってきた食べ物を食べながら、顔を上げて彼女を見て、笑顔で言った。「美味しい!」

氷川静は笑顔で頷き、優しく言った。「美味しければ良かったわ」

彼女は慈愛に満ちた目で藤丸詩織を見つめながら、続けて言った。「さっき会社に来た時、みんなの仕事ぶりを見たわ」

藤丸詩織は氷川静の言葉を聞いて、緊張して思わず姿勢を正し、不安そうに尋ねた。「おばあちゃん、私の経営の仕方はどう?」

氷川静は笑顔で答えた。「とても上手く経営できているわ。みんな生き生きとしていて、お父さんの時よりも良いくらいよ」

藤丸詩織は藤丸哲也がいた頃の光景を思い出し、目を伏せて苦い笑みを浮かべながら、静かに言った。「私は父の能力のほんの一部を学んだだけです。まだまだ学ばなければ」

氷川静は軽くため息をつき、「まだ若いのだから、きっとこれからもっと素晴らしく成長するわ」

藤丸詩織は頷き、寂しい雰囲気を感じ取って話題を変えた。「おばあちゃん、椎名妙先生が会社にいらっしゃるんだけど、会いに行かない?」

先日、彼女は刺繍に関する動画を若宮佳奈と羽鳥新菜たちに渡したが、彼女たちは見ても完全には理解できなかったようで、藤丸詩織は椎名妙先生を会社に招いて指導してもらうことにした。

氷川静の顔に笑みが浮かび、興奮した様子で言った。「詩織、早く椎名に会いに連れて行って」

藤丸詩織も笑顔を浮かべ、すぐに応じた。「はい」

藤丸さんの刺繍部門。

椎名妙は丁寧に熱心に指導していて、若い女性たちは目を輝かせながら彼女の刺繍の手元を見つめ、一生懸命に学び吸収しようとしていた。

氷川静はその光景を見て、満足げに頷いた。

藤丸詩織と氷川静の二人は、彼女たちの学習が終わるまで待ってから中に入っていった。

椎名妙は氷川静の姿を見たとき、信じられない様子で目をこすり、興奮して尋ねた。「氷川、本当にあなた?」

氷川静は前に進み出て、椎名妙の手を握り、笑顔で言った。「もちろん私よ。長い間会わなかったけど、元気にしてた?」

椎名妙は目から感動の涙を流しながら、繰り返し言った。「ええ、ええ、とても元気よ。藤丸の娘さんから、あなたが世界中を旅してるって聞いて、もう会えないかと思ってたわ。まさか…」

椎名妙と氷川静が話している間に、藤丸詩織は女の子たちに囲まれていた。