392 永遠に頭を上げられない

桜井蓮は藤丸詩織が以前周防のお爺様を救い、前回の地震でも多くの人々を救ったことを思い出し、彼女は自分がずっと探していた名医なのではないかと思った。

そう考えた途端、彼の心臓の鼓動が早くなったが、すぐにまた落ち着いた。

桜井蓮は虚空を見つめ、「確かに藤丸詩織は多くのスキルを持っているけど、医術はそれほど難しいから、彼女にはマスターできないはず。まして名医になることなんて…」

桜井蓮は思考が乱れ、携帯電話に表示された藤丸詩織の番号を見つめ、しばらくして、まつ毛を微かに震わせながら、無意識に指で軽くタップした。

藤丸詩織は丁度眠りに落ちかけたところで、携帯の着信音で起こされた。彼女はいらいらしながら電話に出て、不機嫌に言った。「用件を手短に」

桜井蓮は藤丸詩織が電話を切るだろうと思っていたが、まさか出るとは思わず、一瞬呆然とした。