400 あなたは誰

水野月奈は続けて話し始めた。「さっき入り口で、藤丸さんの人が何かの監視カメラを解読したって聞いたわ。きっと藤丸詩織のことでしょうね。彼女って本当にすごいわ。そういえば、さっき榊蒼真が彼女を迎えに来てたわ。彼らは…」

桜井蓮は目を震わせ、視線を落として冷たく言った。「用がないなら帰れ」

水野月奈は表情を硬くし、心の中の不快感を抑えながら優しく言った。「蓮お兄さん、私も一緒に仕事するわ」

桜井蓮は冷たく断った。「必要ない。今は仕事しない。病院に雨音を見舞いに行く」

水野月奈は急いで言った。「じゃあ、私も一緒に行くわ」

桜井蓮は即座に断った。「必要ない」

水野月奈は桜井蓮が足早に去っていく後ろ姿を見つめ、徐々に表情が険しくなった。

彼女は密かに歯を食いしばり、桜井蓮が藤丸詩織に会った後はいつも自分に冷たくなる様子を思い出し、怒りで体が震えた。

水野月奈は桜井雨音のいる病院に車で到着し、彼女が青ざめた顔をしているのを見て、思わず口角が上がった。彼女の蛇のような目は残忍さを帯びていた。

以前のように彼女をいじめられるなら、やってみなさいよ。今のような状態になったのは、桜井雨音の自業自得だわ!

その時、看護師の声が耳に入り、水野月奈は急いでマスクを引き上げ直し、通行人を装って立ち去った。

「この若い女の子は本当に可哀想ね。こんな若くてこんな目に遭うなんて。目が覚めた後、どうやってこの状況に向き合えばいいのかしら」

「ああ、彼女は最初は足を切断しなければならないところだったって聞いたわ。目が覚めても寝たきりの余生を送るしかなかったのに、オーロラ名医が手術をしてくれたおかげで治療できたのよ」

「今の状態が最善の結果ね。名医は本当にすごいわ。私もいつか一度会えたらいいなあ!」

……

水野月奈は足早に立ち去り、表情は次第に暗くなっていった。

なるほど、牛島岳に手加減するなと言ったのに、桜井雨音は助かり、しかも障害も残らなかった。それは名医のせいだったのね。

藤丸詩織に、名医に、みんな余計な口出しをして、私の邪魔をする。

水野月奈は藤丸詩織を始末する時には、この名医も一緒に始末してやろうと決意した!

桜井蓮と高遠蘭子は医師から桜井雨音の容態を聞いた後、病室に戻り、心配そうに彼女を見つめた。