城之内祐希は勝手に桜井蓮のベッドの横の椅子に座り、気遣うように尋ねた。「桜井さん、お体の具合はどうですか?心臓を痛めたと聞きましたが、それはとても危険なことですよ。私の伝手で専門医を何人か紹介しましょうか?」
桜井蓮は相変わらず無表情で答えた。「結構です。あの日は名医が手術をしてくれました。今は回復も早く、もうほとんど良くなっています」
城之内祐希は面子を潰され、表情が良くなかった。
高遠蘭子は桜井蓮の言葉に歯がゆい思いをした。確かに事実を言っているのだが、どうして女の子とこんな話し方をするのだろう?
彼女は急いで補足した。「祐希ちゃん、蓮は心の中では感謝しているのよ。ただ、恥ずかしがり屋だから、口に出して言えないだけなの」
彼女は桜井蓮に反論の機会を与えず、すぐに彼の方を向いて言った。「そういえば、あなた最近ファッションショーについて研究していたわよね。ちょうど祐希ちゃんもそれについて詳しいから、服のことについて話し合えるわ」
城之内祐希は意外そうに眉を上げ、笑顔で言った。「桜井社長はその方面の事業を展開したいんですか?私はよくショーを見に行くので、自分なりの見解もあります。新しい発想のヒントになるかもしれませんよ」
桜井蓮は相変わらず淡々と言った。「ただ何となく見ていただけです。今はファッションには興味がありません」
城之内祐希の上がっていた口角が固まった。彼女は今まで男性にこのように拒絶されたことがなく、心の中で怒りが湧き上がってきた。
高遠蘭子は深く息を吸い、すぐに城之内祐希を慰めた。「祐希ちゃん、蓮はこういう性格なの。気にしないで」
城之内祐希は心の中の怒りを抑え、無理に笑顔を作って言った。「お母様、大丈夫です。桜井さんは体調が悪いから、こんな風になっているんでしょう」
高遠蘭子は連続して頷いた。「そうそう」
高遠蘭子は心の中で城之内祐希のことをますます気に入った。この子は良家の出身で、教養もあり、連れて行っても面目が立つ。まさに理想的な嫁候補だ。
最も重要なのは桜井蓮のことを本当に好きで、結婚後きっと心を込めて蓮の面倒を見てくれるだろう。
ただ桜井蓮は目が見えていないかのように、こんなに素晴らしい女の子を少しも大切にしようとしない。