藤丸詩織は、バラエティ番組の進行状況を確認していた。前回、問題を起こした二人を入れ替えてから、残りのメンバーは落ち着いており、彼女もそれに満足していた。
榊蒼真は黙って藤丸詩織の後ろについて歩き、言葉を発することができなかった。
昨夜の告白以来、彼は藤丸詩織に話しかけることができなくなっていた。昨夜のことを思い出して、桜井蓮を拒絶したように自分も拒絶されることを恐れていたのだ。
真壁誠は箱を持って藤丸詩織の前に来て、「藤丸社長、宅配便の人が誰かからの贈り物だと言っていました」と言った。
藤丸詩織は意外そうに眉を上げた。直感的に、箱の中身が単純なものではないと感じていた。「私のオフィスに持って行って。後で見るわ」
真壁誠は「はい」と答えた。
藤丸詩織はバラエティ番組の手配を終えてオフィスに戻った。
榊蒼真は榊詩門が藤丸詩織を害そうとする者がいると言っていたことを思い出し、急いで「姉さん、この突然送られてきたものは危険かもしれないから、捨てたほうがいいんじゃないですか」と言った。
藤丸詩織は首を振って、「大丈夫よ、怖くないわ」と答えた。
榊蒼真は藤丸詩織が譲らないのを見て、小声で「じゃあ、僕が開けます」と言った。
藤丸詩織は「いいえ…」
榊蒼真は続けて「そうでなければ、箱を捨てましょう」と言った。
藤丸詩織は目を伏せて「この箱から薄い血の匂いがするわ。中には恐ろしいものが入っているかもしれない。あなたは…」
榊蒼真は表情を硬くして「だとしたら、なおさら僕が開けるべきです」と言った。
言い終わると、手を伸ばして箱を開けた。血まみれの人頭が見えた瞬間、彼は慌てて顔を上げて藤丸詩織を見て「姉さん…」と叫んだ。
藤丸詩織は首を振って静かに「大丈夫よ」と言った。
彼女は以前、様々な国を旅していた時、戦争中の国々を訪れたことがあった。そこでは住民の体が切り刻まれ、地面には至る所に人頭や白骨が散らばっていた。それはこれよりもずっと恐ろしいものだった。
藤丸詩織は前に進んで観察し、冷静に「これは精巧に作られたゴム製品よ。本物の人頭じゃないわ」と言った。
榊蒼真も暫く観察し、本当に模造品だと確認して安心して頷いた。そして疑問そうに「この血は…」
藤丸詩織は「後から誰かが塗ったものよ」と答えた。