452 レース会場に入る

藤丸詩織は橘譲に彼の居場所を聞いた後、氷川静の方を向いて、「おばあちゃん、私はちょっと用事があって、しばらく離れないといけないんだけど……」

氷川静は笑顔で言った。「心配しないで行っておいで。私にはヘルパーさんがいるから大丈夫よ」

藤丸詩織はヘルパーに何度も静をよろしく頼んでから、急いで立ち去った。

結城雛は緊張した様子で藤丸詩織の手を握り、「詩織、写真を見たら、もう二人は付き合ってるみたいで、私……」

藤丸詩織は両手で結城雛の腕を押さえ、真剣な表情で言った。「慌てないで。何か誤解があるかもしれないわ。当事者に会ってから話を聞きましょう」

結城雛は頷いて、素直に「うん」と答えた。

橘譲はレース大会に参加していて、藤丸詩織と結城雛が到着した時、入り口の警備員に止められた。「申し訳ありませんが、もう入場時間は過ぎています。これ以上の入場はできません」

結城雛は目に涙を浮かべ、「お願いです。私たちを入れてください」

警備員も困った様子で、「申し訳ありません。これが私の仕事なんです。もし皆様を入場させてしまったら、処罰を受けることになります」

結城雛は失望した様子で視線を外し、「わかりました」

藤丸詩織は携帯を取り出し、結城雛に言った。「お兄さんに電話してみるわ。私たちを中に入れてもらえるかもしれない」

結城雛は「うん」と答えた。

橘譲はウォーミングアップをしていたが、特別な着信音を聞くと、顔に笑みを浮かべて電話に出た。「詩織、どうしたの?」

藤丸詩織:「お兄さん、私たち会場の入り口で入れないの。私たちを中に入れてもらえる?」

橘譲は急いで答えた。「待ってて、今行くから」

数分後、一人の男性が走ってきて、藤丸詩織を見つけると尋ねた。「こんにちは、橘譲の妹さんですか?」

藤丸詩織は頷いて、「あなたは?」と尋ねた。

高遠浩平は目を輝かせ、興奮した様子で言った。「なるほど、橘が妹さんの話をよくするはずですよ。こんなに可愛い妹さんなんですから」

彼は我に返り、急いで言った。「私は高遠浩平です。橘の友人です。橘は電話を受けてすぐに迎えに来たかったんですが、もうすぐレースが始まるので、コーチに止められて来られなくなってしまって。それで私に頼んできたんです」