448 笑顔が醜い

高遠蘭子は言葉に詰まったが、それでも強引に言い張った。「あなたが雨音を誘惑したからでしょう。そうでなければ、彼女があなたにまとわりつくはずがないわ」

藤丸詩織は尋ねた。「私が桜井雨音を誘惑したと言いますが、あなたは実際に見たのですか？」

高遠蘭子には証拠がなく、ただ駄々をこねるだけだった。「どうでもいいわ。きっとあなたが雨音に何かしたから、彼女がこんな風になったのよ。今すぐ彼女を元に戻しなさい。さもないと警察に通報するわよ」

藤丸詩織は腕を組み、冷ややかな目で高遠蘭子を見つめた。「どうぞ」

高遠蘭子は冷笑し、携帯を取り出して電話をかけようとしながら言った。「私が本気だと思っていないの？今すぐ通報するわ。覚悟しなさい！」

桜井蓮は真っ黒な顔をして、高遠蘭子に冷たく言った。「証拠も何もないのに、通報して恥をかくつもりですか？」

高遠蘭子は信じられない様子で桜井蓮を見た。「私が恥をかく？」

桜井蓮は眉をひそめた。「そうじゃないんですか？」

彼は高遠蘭子の攻撃的な態度と、根拠のない非難を思い出し、彼女を見る目がさらに不満げになった。彼女がいつもこうだから、藤丸詩織がトラウマを抱えることになったのだ。

桜井雨音は周りの雰囲気が悪いことにまったく気付かず、まだ藤丸詩織にまとわりついていた。「お姉ちゃん、大好き！お姉ちゃん、飴食べる？すっごく甘くておいしいよ！」

彼女はポケットからすべての飴を取り出し、藤丸詩織の前に差し出して、期待に満ちた目で見上げた。

藤丸詩織は桜井雨音の期待に満ちた目を見下ろし、奇妙な感覚が胸に込み上げてきた。

前回病院で彼女のこの様子を見たとはいえ、三年間ずっと彼女に虐められていたのに、今こんなに変わってしまい、すぐには慣れない。

桜井雨音は藤丸詩織が飴を受け取らないのを見て、首を傾げて不思議そうに「お姉ちゃん？」と呼んだ。

藤丸詩織はため息をつき、手を伸ばして一つの飴を取り、優しく言った。「ありがとう。でも一つで十分よ。残りは雨音が食べて」

桜井雨音は大きく頷いて、素直に「はい！」と答えた。

高遠蘭子は藤丸詩織にまとわりつく桜井雨音と、藤丸詩織の味方をする桜井蓮を見て、体を震わせながら怒りを爆発させた。「私がなぜこんな二人の子供を産んだのかしら。私の味方をしないどころか、藤丸詩織のような下賤な女の味方をするなんて」