018 私が彼を好きになってしまったから

影山瑛志の離れ去りは、蘇我紬の心をより一層悲しませた。

演技ではなかったのかもしれない？

それが重要なの？口があれば誰だって言えるわ。

翌日の早朝。

蘇我紬は目覚めると、朝じゅう迷った末、ついに夏川澄花にメッセージを送った。

【澄花、最近暇になった？】

スマホを置く前に、夏川澄花からの返信が届いた。

【今ドラマを撮影中なの。スケジュールはそんなに詰まってないから、もう一本の作品を引き受けようか迷ってるの。でも、うまく演じられるか心配で…紬、選んでくれない？】

蘇我紬はまばたきをした。

すぐに返信を送った。

【もう一本は引き受けない方がいいわ。】

女優が同時に二つの作品に出演すると、お金のことしか考えていない、役に対して誠実でないと批判されがちだ。蘇我紬は親友についてあれこれ言われたくなかった。たとえもう一本引き受けることが、彼女にとってはたいしたことではなくても。

思えば、夏川澄花と最後に会ったのは三ヶ月前だった。夏川澄花は大学の同級生で、長年演技に情熱を注いできた。偶然のきっかけで少し注目を集め、ある監督に見出されて育てられ、順調に成功を収め、今では引く手あまたの大スターになっていた！

芸能界での評判も極めて良かった。

蛾眉の如き美しい顔立ち、愛らしい笑顔、魅力的な瞳、一目で人を魅了する容姿に、人当たりの良い性格も相まって、人気は衰えることを知らなかった。

二人は大学時代から仲が良く、長年の親友として、お互いのことをよく知っていた。

しかし、彼女は影山瑛志との特別な関係については、夏川澄花に話していなかった。

夏川澄花の性格を考えれば、きっと二人の結婚に賛成しなかっただろうから！

【分かったわ。あなたの旦那様がいない時に遊びに行くわね。】

蘇我紬は一瞬固まり、苦笑いを浮かべながら即座に返信した。

【いつでもいいわ。ちょうど話したいことがあるの。】

【おや？珍しいわね。最近なぜ家にいないの？大きな商談でも？私も混ぜてよ？】

夏川澄花の冗談めいた口調に、蘇我紬は淡く微笑み、絵文字一つと「待ってる」という言葉だけを返した。

しかし蘇我紬が驚いたことに、夏川澄花は言ったらすぐに来た。まだ30分も経たないうちに到着したのだ。

夏川澄花は彼女を見るなり、大きな抱擁で迎えた！

「最近どう？私が撮影してる近くにすごく素敵なリゾート村があるの。影山瑛志も誘って一緒に行かない？」

蘇我紬は首を振り、単刀直入に言った。「澄花、私、影山瑛志と離婚することになったの。」

夏川澄花の動きが止まり、探るような目で蘇我紬を見つめた。すぐに笑顔を浮かべ、遮って言った。「紬、そんな冗談言わないでよ。あなたは影山瑛志のことを何年も好きで、やっと結ばれて人生の勝ち組じゃない。影山瑛志もあなたにあんなに優しいのに、離婚？私が干されるより有り得ないわ。」

「澄花、本気なの。でもこのことは誰にも言わないで。私があなたに相談したのは、仕事と住まいのことを見てもらいたくて。前もって準備しておきたいの。そうしないと、その時になって右往左往することになるでしょう。これからの生活のことも考えなきゃいけないし。」

蘇我紬は淡く微笑み、表情は穏やかだった。まるでこのことが彼女にとって大したことではないかのように。

しかし夏川澄花の表情は変わった。

しばらくの間、言葉も出ないほど黙り込んでいた。信じられない様子で蘇我紬を見つめ続け、もし蘇我紬の表情がほんの少しでも崩れれば、笑って「また変な冗談を」と言えるはずだった。

でも蘇我紬は終始穏やかで、目にも感情の波は見えなかった。

「蘇我紬、一体どうしたの？！」

彼女は焦るあまり、フルネームで呼んでしまった。

蘇我紬は夏川澄花を慰めるように軽く叩き、淡々と言った。「彼は私のことが好きじゃないの。私との結婚は便宜上のもので、年長者に対応するためだけのこと。あなたたちに話さなかったのは、このことが露見して影山家に影響が出るのを恐れたから。私は影山家からたくさんの恩恵を受けたわ。年長者を喜ばせることくらい、当然のことよ。」

「何が当然よ！紬！何を言ってるの！あなたは影山家に引き取られた子でしょう？彼と結婚する前だって可愛がられてたじゃない？今離婚して何が得られるの？影山お爺ちゃんだってあなたのことをとても気に入ってたでしょう？どうしてこんなに分からずやなの！」

「彼はあなたにあんなに優しかったじゃない。芸能界の人たちだってみんな知ってるわ！宣伝だってあんなに力を入れてたのに、今になって全部嘘だったって言われても、私にはどうしても信じられないわ。突然の離婚って、一体なぜ？」

夏川澄花はとても賢い子で、蘇我紬は彼女に打ち明けるからには、すべてを話さなければならないことを知っていた。そうしないと、夏川澄花が直接影山瑛志に会いに行くことだって十分あり得るのだから！

話す以上は、夏川澄花を落ち着かせる自信があった。

彼女はため息をつきながら笑った。「私を責めてよ、澄花。私が彼のことを好きになってしまったんだから。」