022 良い犬は道を塞がない

影山瑛志は怒るどころか笑みを浮かべ、冷ややかに男を見つめて、「君は残り物が好きなようだね」と言った。

男は嘲笑い、テーブルの二人の女性を意味深に見つめ、さらに車椅子に座って近づいてきた女性を見て、率直に言った。「料理が温かいからといって、まずい物は根本的にダメだ。君が見向きもしない残り物が、実は君を虜にしているかもしれないのに、気づいていないだけだ」

ちっ、男の本性だな。

男はそう言うと背を向けて自分のテーブルに戻り、見物していた仲間たちが全員集まってきて、あれこれと話し合い始めた。

見ず知らずの人が、初めての印象だけで蘇我紬のことをこれほど擁護する。

一方、二年間共に過ごした男は、彼女のことを「残り物」と表現する。

彼女は思わず吹き出して笑い、首を振りながら立ち上がった。「澄花、ちょっとトイレに行ってくるわ。先に食べていて」