蘇我紬は言葉を失った。
あの三文字すら彼に与えたくなかった。
彼女は影山瑛志に完全に失望していた!
まさに腹立たしさの極みだった!
自分のことに関しては正々堂々としているくせに、彼女のことになると一歩も譲らず、まるで彼女が何か天地を覆すような悪事を働いたかのように。もともと理不尽なのに、さらに彼女を苦しめる。
彼女を生地のように扱えると思っているの?
少しの気性もないと?
「瑛志、お爺ちゃんが私に何を言ったか知ってる?」
話題を変え、蘇我紬は無表情で言った。
影山瑛志は眉を上げた。「何だ?」
「お前のような孫がいることは、私の人生の恥だって」
蘇我紬は無表情を装っていたが、実際には心の中は葛藤で一杯だった。彼女も言いたくなかったのに...
影山お爺ちゃんのあの時の悔しそうな表情は今でも忘れられない。
お爺ちゃんは言った。
「紬や、瑛志の両親の仲があまり良くなかったから、彼がこうなったのも仕方ないんだ。私の責任でもある。瑛志に十分な愛情を注がなかった。男の子だから感情的なことにはこだわらないと思っていたが、実際は間違っていた。子供は性別に関係なく、みな純粋な感情を持っているものだ」
「瑛志も決して手遅れではない。ただ父親の影響を受けているから、多くの面で考え方が少し違うんだ。人は相手の立場に立って考えることが難しい。明らかに瑛志は感情面で独りよがりだ。君が少し導いてあげられるといいんだが」
「彼の父親は私の教育の失敗だ。それも結局は私の責任だ。紬、できることなら瑛志を諦めないでくれ。どうしても駄目なら強く言ってやりなさい。お爺ちゃんは分かっているんだ、瑛志の心の中で、この老いぼれを大切に思っているということを。強く言っても大丈夫だ、恐れることはない」
「私もできる限り彼に気付かせるよう努力する...」
その時、蘇我紬はここまで聞いて承諾し、影山瑛志に対する見方も変わった。生育環境の影響は根深く、一朝一夕には変えられないものだ。
最初は気付かなくても、後になって直すのは非常に苦しい。
習慣を改めるように頭を悩ませ、抵抗感を覚える。
蘇我紬は唇を噛み、横を見ると、影山瑛志がずっと反応を示さないことに気付いた。我に返って彼を見る。
影山瑛志がその場で固まっているのを見て、ぼうっとしているようだった。
蘇我紬は口を閉ざした。