夏川澄花がここに来たのは、他でもない。
二つのことのため。
一つは自分のため、もう一つは蘇我紬のためだ。
蘇我紬が電話で言ったことを、夏川澄花は屁とも思わなかった。
この件が出てきた時、事態が悪化していく時、夏川澄花は影山瑛志を訪ねた。
元々は白川蓮のスキャンダルで、夏川澄花は面白がって見ていたのに。
たった数日で、こんな状況になってしまった。
しかし、影山瑛志の態度に彼女は心が冷え切った。蘇我紬のために心が冷えたのだ。
あの男は完全に白川蓮の味方になってしまった。
白川蓮の障害が蘇我紬の仕業だと知っただけで!
「あら、誰かと思えば、夏川スター。こんな場所は好きじゃないんじゃなかった?どうして御足労いただいたの?」派手な装いの女性が入り口に向かって歩いていたところ、夏川澄花とばったり出くわした。