136 犬に突き当たられた

蘇我紬が入室すると、医師が優しい笑顔を向けてくれた。

その瞬間、彼女の心に暖かい流れが広がり、気持ちもずっと楽になった。

林与一は本当に細やかで、彼女が想像していた以上に多くのことに気を配っていた。

蘇我紬はマスクと帽子を外し、医師に優しく微笑みかけ、医師から渡された検査票の束を受け取ると、すぐさま丁寧に「ありがとうございます」と言った。

「当然です。蘇我さん、検査が終わりましたら私のところへお越しください。」

蘇我紬は再び身につけ、医師に別れを告げた。検査の間、林与一は彼女に付き添い続け、必要な時は外に出て病院の医師たちと雑談をしていた。時折その会話が聞こえてくると、蘇我紬の心は静かな湖面に石が落ちたように波紋を広げた。

「林先生のお言葉ですから、もちろんしっかりと配慮させていただきます。ご安心ください。病院のスタッフは日々生死を目の当たりにしていますから、直接見なくても様々なことを耳にしており、その重要性を理解しています。」