174 誰も分かち合えない

部屋の中から、心を引き裂くような悲鳴が響き渡った。

部屋の外にいた早乙女燐でさえ身震いし、病室の中を一瞥すると、ドアノブに手をかけながら声を上げた。「影山若様、医者を呼びましょうか？」

部屋の中にいる影山瑛志は冷たい声で言った。「誰も入ってはいけない」

目の前の蘇我紬を見つめながら、彼の心は痛みに襲われた。その子供が他人のものだと考えただけで、受け入れがたかった。彼にはそれを問う資格がないことは分かっていた。結局、この事実は彼にさえ気付かれないほど隠されていたのだから。

子供の件が露見しなければ、きっと彼は知ることもなかっただろう。

契約結婚に過ぎないのだから、影山瑛志には蘇我紬が誰と関係を持とうと干渉する権利はなかった。それでも心の底に嫌悪感が湧き上がってくる。