172 白川家

分別をわきまえない人を、なぜこんなに甘やかすのか?

影山瑛志は自分がそんな人間ではないと思っていたが、白川蓮の苦難が全て自分のせいだと考えると、彼女には本来もっと多くの選択肢があったはずだ。

早乙女燐を見つめながら、影山瑛志は軽く微笑み、深い感慨をこめて言った。「君は面白い考えを持っているね。でも、彼女が今一人きりになってしまった主な原因は私にある。私が彼女を見捨てたら、殺すのと何が違うというんだ?」

早乙女燐は唇を引き締めた。この件については彼も知っていた。

元々、白川蓮は白川家であまり寵愛されていなかったが、それは単に次女様より少し劣っていただけだった。

次女様を除けば、白川お嬢様は何でも手に入れられたはずだ。

しかし、運が悪かった。白川家は一気に没落し、最終的に政略結婚への道を選ばざるを得なくなった。そのような事態になれば、白川蓮が標的になることは明らかだった。

しかしその時、白川蓮は影山瑛志と親密な関係にあった。まだ付き合ってはいなかったものの、白川蓮の心は完全に影山瑛志のものだった。

白川家がそれを知らないはずがなかった。

しかし、人の願いは叶わなかった。

たとえその相手が影山瑛志で、政略結婚の相手よりもずっと家柄が良かったとしても、白川家は承知しなかった。白川蓮に政略結婚をさせ、影山瑛志との関係を断ち切ろうとした。

さらに影山家からの度重なる妨害もあり、影山瑛志一人だけが必死に支えていた。

白川蓮は影山瑛志と結ばれることはできなかったが、白川家のために自分の幸せを犠牲にすることは拒否し、そこで白川家との関係は完全に断絶した。

主に白川家がこの娘を認めたくなかったからだ。

後に白川蓮は、これら全ては白川次女様、つまり実の妹も影山瑛志に恋をしていたためだと知った。

政略結婚で白川家の問題を解決し、同時に次女様が影山家に近づくための準備を整え、次女様の願いも叶えられる。二人が結ばれることで一石二鳥だった。

これ以上の都合の良い話はなかった。

白川家の算段は見事だったが、現実はそれよりもずっと厳しかった。

最終的に白川蓮は国外へ去り、蘇我紬と影山瑛志が結婚した。

早乙女燐はこれを思い出し、黙って頭を下げ、もう何も言わなかった。