204 事態の進展

「遅くとも明後日までに、国内に連れて行って、警察署に引き渡さなければならない」

早乙女燐はそれを聞いて頷き、向こうの人たちのことを心配した。本当にタイトなスケジュールだ。

「影山若様、もう一つ報告があります。相手は捕まえられませんでしたが、決定的な証拠を提供してくれると言っています。ただし、その代わりに我々は彼らの追跡を中止しなければなりません」

向こうの人たちは、合法的な手段だけでなく、あらゆる手段を使って人を捕まえる。命がけの逃亡者でも、命のためなら妥協するものだ。

まして女一人のことだ。

彼女のちょっとした恩義など、自分の命に比べれば取るに足らない。

これを聞いて、影山瑛志は頷いた。「承知した。証拠は明日までに見せてもらう」

「明日は厳しいかもしれません。相手は逃げてしまい、捕まえられませんでした」

その条件は、相手を捕まえそうになった時に通信で伝えられたが、最終的には捕まえられなかった。

早乙女燐の言葉に、影山瑛志は沈黙した。

「向こうから連絡を取らせろ」

「はい」

影山瑛志が妥協したことを理解し、これ以上は何も言わずに承諾した。

...

時は一週間後に流れていた。

蘇我紬の怪我は強制的な管理の下で良く治療され、日常生活に支障がないほどに回復していた。

しかし、蘇我紬の精神状態は本人にしかわからないほど耐え難いものだった。今では誰かが余計な一言を言ったり、少し冷たい口調で話しただけで、全身が不快感に襲われる。

全身が緊張で固まってしまう。

この問題に最初に気付いたのは当然医者だった。

医者は発見後すぐに影山瑛志に電話で連絡した。「影山さん、蘇我さんの精神状態があまり良くありません。お時間があれば来ていただけませんか」

影山瑛志は眉をひそめ、心配そうに尋ねた。「どうしたんだ?」

「詳しくはお越しいただいてからお話しします。お待ちしております」

「じゃあ今日行く。すぐに着く」

「承知しました」医者は返事をすると、電話を切った。

影山瑛志は携帯を置くと、拘置所から出てきたばかりの、魂の抜けたような白川蓮を見て、この女こそが精神を病んでいるのではないかと思った。内側から湧き上がる苛立ちを感じた。

前を見つめながら言った。「怪我は大丈夫そうだな。住まいに戻るか?」