205 鎮静剤を一本

影山瑛志はちらりと目をやり、ため息をつくと、車のスピードを上げ、彼女を急いで住まいまで送り届けた。

目配せで降りるように促した。

白川蓮は不安げに尋ねた。「一緒に降りないの?」

影山瑛志の目つきが既に答えを示していた。降りる気配はないどころか、彼女の言葉が多すぎると感じているようだった。

白川蓮は影山瑛志のこの態度が一番怖かった。彼女は全く見ることができず、急いで頭を下げて車を降りた。

車のドアが閉まったばかりで、白川蓮がまだ後ろに安定して立つ前に、車は轟音とともに走り去った。

彼女には排気ガスの跡だけが残された。

白川蓮は思わず手を握りしめ、顔全体が歪んでいた。

この半月間、彼女は本当に苦労したのだ。

...

早乙女燐が一緒に行かなかったのは、影山瑛志が証拠を急いで欲しがっていたからだ。