205 鎮静剤を一本

影山瑛志はちらりと目をやり、ため息をつくと、車のスピードを上げ、彼女を急いで住まいまで送り届けた。

目配せで降りるように促した。

白川蓮は不安げに尋ねた。「一緒に降りないの?」

影山瑛志の目つきが既に答えを示していた。降りる気配はないどころか、彼女の言葉が多すぎると感じているようだった。

白川蓮は影山瑛志のこの態度が一番怖かった。彼女は全く見ることができず、急いで頭を下げて車を降りた。

車のドアが閉まったばかりで、白川蓮がまだ後ろに安定して立つ前に、車は轟音とともに走り去った。

彼女には排気ガスの跡だけが残された。

白川蓮は思わず手を握りしめ、顔全体が歪んでいた。

この半月間、彼女は本当に苦労したのだ。

...

早乙女燐が一緒に行かなかったのは、影山瑛志が証拠を急いで欲しがっていたからだ。

影山瑛志は自分で車を運転して白川蓮を迎えに行った。

影山瑛志はそのUSBメモリを手に入れた時、車のパソコンを取り出し、挿入して再生を始めた。

一つの音声ファイルは白川蓮とその男との通話だった。

白川蓮の声を聞いた瞬間、影山瑛志の心は沈み、同時に不安感が押し寄せてきた。

「影山瑛志が彼女を救いに来たら、すぐに影山瑛志の目の前で始末すればいいわ、分かった?」

「もっと面白いことを思いついたわ。影山瑛志が誰を選ぶのか、とても気になるわ...」

「...」

次は録音で、蘇我紬と白川蓮の声が入っていた。最初から全てが記録されていた。蘇我紬と白川蓮の会話から、白川蓮が影山瑛志に電話をかけ、その後蘇我紬が殴られ、蘇我紬が彼に電話をかけるまで...

そしてビデオ通話で発覚した。

男が蘇我紬を脅す声は、この時特に耳障りだった。

影山瑛志はただ聞いているだけで、心が震えるのを感じた。

彼にはこの音声を最後まで聞く勇気さえなかった。心の中で一息つきながらも、全てが極めて馬鹿げていると感じた。慎重を期すために、白川蓮にしても蘇我紬にしても。

彼は誰も信じることを選ばなかった。

しかし、これは被害者である蘇我紬にとって、公平と言えるだろうか?

影山瑛志の表情は良いとは言えず、早乙女燐にも分かっていた。この瞬間の影山瑛志は、絶対に近寄ってはいけない状態だった。