病院に着いた。
蘇我紬は影山瑛志の意向に従って病室を移動し、新しい部屋に変えた。
病室というよりも、影山瑛志のために用意された特別な休憩室で、病棟のフロアにはなかった。
医師は蘇我紬の包帯交換や診察のためにわざわざここまで来なければならなかった。
影山瑛志は蘇我紬の世話を済ませると、離婚証明書を持って白川蓮のところへ解毒剤を取りに行こうとした。
蘇我紬はベッドに横たわりながら、突然動きを止め、出かけようとする影山瑛志を慌てて呼び止めた。「私の水筒を持ってくるのを忘れたみたい。前に床に落としたから、保温ポットの中で熱湯消毒してたの…」
影山瑛志は立ち止まった。「捨てようと思っていた保温ポットのこと?」
蘇我紬は何度もうなずいた。
その保温ポットは保温機能があまり良くなくなっていた。おそらく前回の洗浄時に壊れてしまったのだが、蘇我紬は気にしていなかった。影山瑛志が使用した時に気づいたのだった。