218 感情の制御不能

蘇我紬は唇を動かしかけたが、言葉を飲み込んだ。彼女は目の前の影山瑛志を呆然と見つめ、心の中にはただ一つの思いがあった。

それは、影山瑛志が彼女の主な質問に答えていないということだった。

つまり、彼も自信がないのだろうか?

ただ、彼女の心を傷つけたくないから言えないだけなのかもしれない。

結局のところ、彼女はまだ患者なのだから。

蘇我紬は微笑んで、素直に頷いた。心の中に湧き上がる不快な感情を必死に押し殺しながら、「瑛志さん、このスイカジュースに氷を入れてもらえますか?」

そう言いながら、蘇我紬は自分の一番近くにあった飲み物を手に取り、影山瑛志に渡した。

影山瑛志はすぐに承諾し、グラスを持って車の方向へ向かった。ちょうど背を向けた時、蘇我紬を一人でここに残すのは少し不安だと感じた。確かに浜辺には人が少なかったが、誰もいないわけではない。

周りの人々を見渡すと、砂遊びをしている家族がいて、キャッキャと写真を撮り合う四、五人の女の子たちがいて、一人で風景を撮影しているカメラマンもいた。

そして、二人に一番近い場所には寄り添い合うカップルがいた。影山瑛志は一通り見回して、危険度は低いと判断した。

日常生活にそんなに危険な瞬間なんてないのだ。

影山瑛志は頭の中の良くない考えを振り払い、蘇我紬に何か言い付けようとした時。

暖かな夕陽の下で、蘇我紬が艶やかな笑顔を見せた。その笑顔は一瞬で影山瑛志の心に染み入った。蘇我紬はくすくすと笑いながら、「一緒に行って欲しいの?」

そう言いながら手を伸ばすと、指先が少し震え、まるで影山瑛志の心を掴むかのようだった。

蘇我紬が一緒について来てくれる、ずっと側にいてくれるのは、もちろん良いことだ。

影山瑛志は直接手を伸ばして彼女の手を握り、立ち上がらせようとした時、彼女が急に眉をひそめるのに気付いた。蘇我紬はお腹を見下ろし、すぐに再び笑顔を作り、懸命に立ち上がろうとした。

影山瑛志は異変に気付き、思わず尋ねた。「どうしたの?」

蘇我紬は首を振って、「大丈夫です。同じ姿勢で長く座っていたから、少ししびれただけ...」

影山瑛志はスイカジュースを置き、蘇我紬を椅子に押し戻した。「僕一人で行くから、ここで待っていて。すぐ戻るから。」

蘇我紬は眉をひそめかけたが、まだ何も言えないうちに。