蘇我紬は自分の失態を知り、親友の面子を潰してしまったことを悟り、すぐにマンゴスチンの実を一つ突いて夏川澄花に渡しながら言った。「撮影は本当に大変で疲れるものよね。あなたみたいに責任感のある役者さんは珍しいわ。撮影で苦労するって言うのは、褒め言葉なのよ」
夏川澄花は考え直してみると、確かにそうだった。
顔だけで売れている芸能人もいて、そんなに綺麗でもないのに、演技も下手なうえに、偽りの部分も多い。そう考えると、夏川澄花はため息をつくしかなかった。
蘇我紬の肩にすり寄りながら、マンゴスチンの実をちらりと見た。
白くてぷっくりしていて、見た目も味も良さそう。
蘇我紬は察して、もう一つ突いて渡した。
黒田伊織はそれを見て眉を上げた。蘇我紬のたった一言で機嫌が直ったのか?
「あなたみたいな人は多くいるわ。手抜きをする人はいずれ淘汰されるものよ。あなたがいなくても困らないし、一人減っても問題ない」
黒田伊織のこの言葉は、よく考えれば何の問題もなかった。
手抜きは長続きしない。
蘇我紬はそれに同意しつつも、後半の言葉は気分が良くなかった。恩を受けた手前、夏川澄花が言う前に急いで言った。「黒田さんの言う通りね。余裕があるなら休んでもいいし、本当に好きな脚本が来たら演じればいい。そうすれば良い作品が作れて、評判も良くなるかもしれないわ」
夏川澄花は黒田伊織を無視して、蘇我紬の言葉に大いに賛同し、親指を立てて「紬、あなたこそ私のことを一番分かってくれる人よ」と言った。
黒田伊織はそれを聞いて口角を引きつらせた。
蘇我紬は軽く笑い、黒田伊織が現状に満足していることが表情からよく分かった。
そして、黒田伊織が夏川澄花に撮影に行かせたくない理由も推測できた。
きっと夏川澄花のことを心配しているからだろう。
「そうそう、紬、メッセージが来たわ。あなたの服が届いたの。超可愛いドレスよ!お揃いなの、行きましょう!」
蘇我紬のために用意されたドレスは、とても上品で、ミントグリーンを基調に淡い白を混ぜ合わせ、引き締めるべきところは引き締め、緩めるべきところは程よく、蘇我紬が着ると驚くほど美しかった。
美女の多い芸能界でも、蘇我紬のような素晴らしいスタイルの持ち主は稀だった。