影山瑛志に連絡を取れば、彼の能力からすれば、何か問題に気付くのは当然のことだろう。
白川蓮はそれを利用して逃げ出そうとしていた。
しかし夏川澄花の一言で彼女は奈落の底へと突き落とされた…
「夏川澄花さん、影山瑛志がこのことを知っているということですか?」
白川蓮は一瞬動揺し、動悸で全身が緊張で震え、心臓は激しく鼓動を打ち、腕の痛みさえ忘れてしまった。
頭の中でその言葉が何度も響き渡る。
彼女は取り憑かれたように目を落ち着きなく動かし、口を半開きにしたまま、パニック状態に陥っていた。
夏川澄花は蘇我紬に目配せをした。
この状況でどう対応すべきか分からないという意思表示だった。
暴露するかしないかは、蘇我紬に決めさせるべきだと。
蘇我紬は首を横に振った。
夏川澄花はそれを理解し、「そんなつもりはないわ。そう思うのはあなたの勝手でしょう」と言った。
「どういう意味?彼に解毒薬を頼んだら、疑問に思わないはずがないでしょう?」
夏川澄花は嘲笑い、「あなたなんかに疑われる価値もないわ」
「…」
夏川澄花は首を傾げ、意味深な口調で続けた。「どう対処すればいいかしら?あなたが彼が来るかどうか知りたがっているようだから、望み通りにしてあげましょう。ここで待っていなさい。影山瑛志が私にあなたのことを尋ねてきたら、すぐにあなたがここにいることを伝えて、迎えに来てもらうわ」
夏川澄花は言いながら嘲笑的に笑い、電話を切った。
白川蓮は通話が切れた後のツーツーという音を聞きながら、呆然としていた…
茫然自失の状態に…
すべてを白状したのに、出られない。血を流しながら苦しみ続けなければならない…
なんのためだったのか?
白川蓮は慌てて隣にいる仮面の男を見つめ、歯を食いしばって言った。「もう一度電話をかけ直してくれませんか?もう待てません、待てないんです、待てない!なぜ影山瑛志を待たなければならないの?私はすぐに出られるはずなのに!」
白川蓮は話すほどに怒りが込み上げ、心が引き裂かれるような苦痛に顔を歪め、先ほどの自分を殺してしまいたいほどだった。
夏川澄花への復讐心から、影山瑛志を持ち出して脅そうとしたのに。
まさかこんな結末になるとは思いもよらなかった!
蘇我紬はまだ真剣に白川蓮を観察していたが、夏川澄花に肩を叩かれてようやく我に返った。