調書を取り終えた頃には、空がすでに白みはじめていた。蘇我紬は警察署を出て、昇りはじめた朝日を見上げ、寂しさに包まれた。
また新しい一日が始まる。
でも昨夜以来、すべてが変わってしまった。
蘇我紬は周りを見回した。見慣れない環境ばかりで、携帯電話は押収され、今は無一文。どの方向に進めばいいのか、どこに行けばいいのかもわからない。
通りには人々が行き交い、車が往来している。蘇我紬は虚ろな目で数回見つめた後、鼻が詰まり、目が赤くなり、ゆっくりとしゃがみ込んで、顔を埋めて崩れるように泣き出した。
どうして?
どうして自分にこんなことが起きたの?
一体誰が裏で仕組んで罠にはめたの?
本来なら、影山瑛志と仲直りして、幸せに暮らせると思っていた。自分のキャリアも築けて、すべての生活が良い方向に向かうはずだった。
でも現実は容赦なく、それは夢に過ぎないと告げた。
今や、その夢も完全に砕け散った。
秋風が吹き抜け、蘇我紬は思わず身震いした。今の彼女は長いワンピース一枚だけで、風を防ぐことなどできない。
それでも蘇我紬は泣き続けた。涙は糸の切れた数珠のように、止めどなく流れ落ちた。
もし昨日、夏川澄花と一緒に帰るか、影山瑛志に迎えに来てもらっていたら、こんなことにはならなかったのだろうか?
蘇我紬は少し後悔した。
でも、ただ人に頼りすぎたくなかっただけなのに。
それすらも間違いになってしまうなんて。
「神様、私は誰も恨んでいないはず。ただ愛する人と簡単な幸せな生活を送りたかっただけ。それでも難しいことなの?」
「どうして私の幸せを奪うの?」
「どうして……」
蘇我紬は何度も何度も小さな声で繰り返した。声は徐々に嗄れていった。
突然、車のクラクションが鳴り、蘇我紬が顔を上げると、涙で霞んだ目に見覚えのある人影が車から降りて、彼女に向かって駆け寄ってくるのが見えた。
そして、温かく硬い抱擁に包まれた。
「紬……」耳元で聞き慣れた低い声が響いた。
蘇我紬はその場で固まり、泣くことさえ忘れた。
影山瑛志はますます強く抱きしめ、まるで骨の髄まで溶け込ませたいかのように。かすかな香りが鼻をくすぐり、蘇我紬はようやく我に返った。
影山瑛志が見つけてくれた。