310 帰る家へ

調書を取り終えた頃には、空がすでに白みはじめていた。蘇我紬は警察署を出て、昇りはじめた朝日を見上げ、寂しさに包まれた。

また新しい一日が始まる。

でも昨夜以来、すべてが変わってしまった。

蘇我紬は周りを見回した。見慣れない環境ばかりで、携帯電話は押収され、今は無一文。どの方向に進めばいいのか、どこに行けばいいのかもわからない。

通りには人々が行き交い、車が往来している。蘇我紬は虚ろな目で数回見つめた後、鼻が詰まり、目が赤くなり、ゆっくりとしゃがみ込んで、顔を埋めて崩れるように泣き出した。

どうして?

どうして自分にこんなことが起きたの?

一体誰が裏で仕組んで罠にはめたの?

本来なら、影山瑛志と仲直りして、幸せに暮らせると思っていた。自分のキャリアも築けて、すべての生活が良い方向に向かうはずだった。