325 共に入浴

彼は頭の中であのビデオを思い出そうとし、見落としていた細部を思い返そうとした。一瞬の怒りで散らされてしまった何かがあったように思える。

蘇我紬の脚に傷跡があるかどうか、どうして知らないはずがあろうか。おそらく白川蓮が現れてから、紬に関する多くのことを意図的に見落としていたのだろう。紬を本当に愛していることに気付いた時、彼は既に紬への深い愛情を抱いていたことを悟った。

この瞬間、彼の心は徐々に落ち着きを取り戻した。

彼女が傍にいるだけで、それで十分だった。

蘇我紬はより強く抱きしめながら、敏感に尋ねた。「瑛志、本当に私を信じてくれるの?これがまた夢じゃないかって怖いの。」

前回、影山瑛志が彼女を信じると言いながら、結局は見捨てたことを思い出した。

「ああ、信じているよ。もう二度と一人にはしない。」

影山瑛志は紬の首筋に顔を埋め、目を閉じて彼女の香りに陶酔した。

紬は何も言わなかった。瑛志はあのビデオを見た、きっと気付くはずだと信じていた。

二人は暫く沈黙し、瑛志は紬を手放したくなかったが、優しく彼女を抱擁から解き、見下ろして言った。「早くお風呂に入っておいで。水が冷めちゃうよ。風邪引くといけないから。」

「うん。」紬は頷き、名残惜しそうに瑛志から離れ、浴室へ向かった。

二十分後、紬はまだ浴室から出てこなかった。

瑛志は何度も時計を見てから立ち上がり、ドアをノックした。「紬、大丈夫?何か足りないものある?」

紬は浴槽で心地よく体を休め、湯気が少しずつ体に染み込んでいく温かさを感じていた。

瑛志のノックを聞いて目を開け、何かを思いついたように笑いながら外に向かって声を掛けた。「瑛志、フルーツが食べたいな。持ってきてくれない?」

瑛志はそれを聞いて、ドアノブを握る手が一瞬止まった。「紬、お風呂上がってから食べるのはどう?」

紬が素直に聞き入れると思っていたが、予想に反して即座に拒否された。「だめ、今すぐ食べたいの。持ってきてよ~」

瑛志は深く息を吸って、「わかった、待っててね。」

瑛志は階下に降りて、紬の好きなドラゴンフルーツを切り分けた。

浴室に持ち込む時、瑛志自身が緊張していた。

紬は甘く微笑みかけていて、その笑顔には何か魅惑的なものがあった。

瑛志の喉仏が動いた。