324 仲直り

外はいつの間にか雨が降り出していた。

土砂降りの雨。

蘇我紬は雨を気にもせず、夏川澄花に挨拶もせずにアパートを飛び出し、道で適当にタクシーを拾って影山邸へと向かった。

道中、蘇我紬は影山瑛志に何度も電話をかけたが、誰も出なかった。

影山瑛志は既に退院していた。医師は経過観察のため入院を勧めたが、彼は強く退院を希望し、誰も止められなかった。

蘇我紬からの電話は当然見ていたが、応答する勇気が出なかった。

彼は蘇我紬を信じていたが、あの動画を見たとき、心の中で何かが崩れ落ちた。そして蘇我紬が彼の目の前で林与一を庇う姿を見て、完全に崩壊してしまった。

「ごめんね紬、少し時間をくれ」影山瑛志は泣きながら目を閉じ、指の隙間から涙が滑り落ちた。

彼は聖人ではない。あの動画を無視することはできなかった。たとえ蘇我紬と林与一が相次いで説明したとしても、動画は確かに記録されていたのだ。