341 不信

二日目、蘇我紬は目覚めるとすぐにトイレに駆け込み、何度も吐き続け、顔色も極めて悪くなった。

「病院に行ってみようか?」影山瑛志は紬の背中を優しく撫でながら、眉をひそめて尋ねた。

しかし紬は手を振って、病院に行くことを拒んだ。「大丈夫よ、つわりは普通の反応だから、気をつければいいの」

「だめだ。体調が悪いなら病院で診てもらって、ついでにつわりを和らげる方法も聞いてこよう。

君が苦しむのを見ているのが辛いんだ」

影山瑛志は拒否を許さず、紬を抱き上げて外へ向かった。

紬は驚いて慌てて影山瑛志の首に腕を回した。彼がそこまで言うなら、もう拒まないことにした。

しかし、あいにく病院で林与一と出くわしてしまった。

産婦人科から出てきた林与一は、たまたま通りかかって紬を見かけ、心配そうに尋ねた。「どうしたんですか?赤ちゃんに何かあったんですか?顔色が悪いようですが」

影山瑛志は警戒するように林与一を一瞥し、紬を後ろに庇いながら冷たく言った。「それはあなたには関係ないでしょう?それとも、まだ紬に何か企んでいるんですか?」

林与一はポケットに両手を入れ、影山瑛志の言葉に無関心な様子で答えた。「正直に言えば、確かに迷いましたよ。あの動画はかなりリアルに見えましたからね」

紬が眉をひそめて何か言おうとした時、影山瑛志は彼女に「紬、先に車で待っていて。この件は僕が処理する」と言った。

紬は二人が殴り合いになることを恐れ、「わかったわ。でも絶対に手を出さないでね」と念を押した。

「ああ」影山瑛志は頷いた。

紬は何度も振り返りながらその場を離れ、車へと向かった。

影山瑛志は紬が遠ざかるのを見届けてから、林与一の方を向いた。

林与一は言った。「よく考えてみたんですが、あの夜、何も起こらなかったとは限らないんですよね。だから紬のお腹の子供は私の子供かもしれない。そうなると、私が紬と結婚して、子供に完全な家庭を与える必要があると思うんです」

「林与一、まだ自分の立場がわかっていないようですね?あなたのような一介の医者に、紬を幸せにできると思っているんですか?それとも、その危うい林家を頼りにでもするつもりですか?言っておきますが、私は絶対に紬をあなたに渡したりしません!」