夏川澄花が認めないのを見て、蘇我紬と新條結月は目を合わせ、お互いの目から諦めの色を読み取った。
二人はもうこの話題には触れず、夏川澄花の面子を立てながら、片付けをしながら他の話をし始めた。
話しているうちに、蘇我紬は軽いめまいを感じた。朝、急いで出かけたため朝食を取らなかったせいだと思い、頭を振って気分を落ち着かせようとした。
新條結月と夏川澄花は蘇我紬の異変に気付かなかった。
三人は笑い合いながら続けていた。
しかし、クリーム型を片付けているとき、蘇我紬はクリームの匂いを嗅ぎ、突然吐き気を催し、すぐにトイレに駆け込んで吐いた。
夏川澄花と新條結月は手にしていたものを置き、急いでトイレに蘇我紬を見に行った。
「紬、大丈夫?」夏川澄花は心配そうに尋ねた。
蘇我紬は手を振って、「大丈夫よ、たぶんクリームの匂いが少し気持ち悪くなっただけ」と答えた。
新條結月は眉をひそめた。「クリームのせい?でも、さっきまでスイーツを作るときにもクリームを触っていたのに、そのときは何ともなかったじゃない?」
つわりは普通のことだが、この遅れてきた反応は少し変だった。
蘇我紬は一瞬固まった。実際、彼女も理由がわからなかった。今回は突然、原因もなく吐き気を催したのだ。
夏川澄花も困惑した様子で二人を見つめた。
「私もどうしてなのかわからないの、ただ突然...うっ!」蘇我紬は言葉を最後まで言い終えることができず、また吐き始めた。
朝食を取っていなかったため、胃は空っぽで吐くものもなく、最後は酸っぱい胃液だけだった。
蘇我紬は吐き終わってからまためまいを感じ、急いで近くにいた夏川澄花の腕を掴んだ。「澄花、私...」
蘇我紬はめまいがひどいと言おうとしたが、言葉を発する前に完全に意識を失い、夏川澄花の上に倒れかかった。
突然の失神に夏川澄花と新條結月の二人は驚愕した。
夏川澄花は蘇我紬の体を揺すって、意識を取り戻そうとした。「紬、紬?」
しかし返事はなかった。
新條結月は我に返り、急いで救急車を呼んだ。
二人は慌てふためいて蘇我紬を病院に搬送し、途中で夏川澄花は影山瑛志に電話をかけた。
影山瑛志は知らせを受けると、すぐに予定されていた会議をキャンセルし、早乙女燐に蘇我紬のいる病院まで車を走らせるよう指示した。