348 言葉を引き出す

蘇我紬は心の中で冷笑した。自分が相応しくないなら、あの白川蓮が相応しいというの？

蘇我紬は表情に出さず、携帯を取り出していじりながら言った。「でも、影山瑛志は私が誘拐されて、侮辱される可能性があったことを知った後も、気にしないと言ってくれたわ。私とその人の間は潔白だと信じてくれて、たとえ何かあったとしても気にしないって。大切なのは私だけだって言ってくれたの」

白川蓮の正体を暴くには、言葉で少しずつ刺激を与えていく必要があった。

白川蓮は影山瑛志が自分を愛し続けていると思い込んでいたので、この言葉を聞いて即座に怒り出した。「影山瑛志がそんなこと気にしないはずがないわ！気にしないなら、どうして喧嘩になったの？」

白川蓮は二人の喧嘩の動画を何度も見ていた。影山瑛志はこの件で蘇我紬と喧嘩したのだから。

蘇我紬は流れに乗って言った。「それは、ネット上の騒動が影山瑛志に影響を与えると思ったから、私が彼から離れようとしたの。でも彼は私に去って欲しくなくて、だから喧嘩になったのよ」

白川蓮はそれを聞いて、冷ややかに鼻を鳴らした。「少しは分かってるじゃない。そうなら、早く彼の元から離れることね。そうしないと、お互い嫌になるだけよ。影山瑛志だってあなたを嫌うはず。あなたみたいな尻軽な女が、影山瑛志に執着するべきじゃないわ。影山瑛志がいなくなっても、林与一という選択肢があるでしょう」

蘇我紬はその人物が誰なのか言及していないのに、白川蓮は確信を持ってその男性が林与一だと指摘した。影山瑛志と林与一の喧嘩動画があったとしても、白川蓮は彼を知らないはずだった。

つまり、それ以前から林与一の身元を知っていたということだ。

蘇我紬は遮って尋ねた。「どうして林与一のことを知ってるの？」

白川蓮は蘇我紬を睨みつけ、考えも無しに一気に言い放った。「あの男が私の計画を台無しにしかけたからよ！途中で彼に目をつけられなければ、適当な男を見つけてきただけだったのに！」

「蘇我紬、あの男が林与一で良かったと思いなさい。そうでなければ、ネットであなたと野良男との関係が噂されていたはずよ！」

蘇我紬は心の中で、この事件の首謀者が白川蓮だと確信を深めた。

彼女は苦悩に満ちた表情で、感情的に言った。「もう言わないで！私と林与一の関係は潔白なのよ」