355 林与一の冷酷さ

篠原澄佳は突然興奮し始めた。「久世澪!あなたもたいしたことないわ!ただの尻軽女なのに、影山家にそんなに大切にされて、本当に気持ち悪い。」

立ち去ろうとしていた久世澪は振り返り、身を屈めて篠原澄佳の顎を掴んだ。「大人しくしていた方がいいわよ。蘇我紬のことを一言でも言えば、あなたを社会的に抹殺するわ!そうなったら、林家の誰一人もあなたの味方にはならないでしょうね!」

篠原澄佳の目に一瞬の動揺が走り、久世澪を睨みつけたまま黙り込んだ。

久世澪は唇の端を歪めて笑い、篠原澄佳を脇に投げ捨て、嫌そうに手を拭いながら別荘を出て行った。

久世澪が出る時、ちょうど急いでやって来た林与一とぶつかった。「影山瑛志から電話があったんです。また蘇我さんに何かしたんでしょう?」

林与一は久世澪に苦笑いを向け、申し訳なさそうな表情を見せた。

久世澪は林与一に対して比較的良い印象を持っていたため、それほど冷たい口調ではなかった。「彼女がどんな畜生のような行為をしたのか、自分で確かめてみたらどう?」

林与一の前でさえ、久世澪は容赦なく篠原澄佳を罵った。

そう言い終えると、久世澪は付き人を従えてその場を去った。

林与一は手を懐に入れて部屋に入った。篠原澄佳はまだベッドに崩れるように横たわったままで、生きる気力を失ったような疲れ果てた表情を浮かべていた。

しかし林与一は篠原澄佳を一瞥しただけで、服が少し破れている程度で実際の怪我はないことを確認すると、心の中でほっと胸を撫で下ろした。久世澪は結局のところ手加減したようだ。彼はなおも冷ややかな表情でベッドの上の女を見つめた。

「前回も言ったはずだ。こういうことに首を突っ込むなと。これは自業自得じゃないのか?」

篠原澄佳は林与一の声を聞くと、ただ果てしない疲労と失望を感じた。「与一、お母さんがこんな目に遭っているのに、まだ久世親子の味方をするの?それとも一人の女のために、実の母親を責めるつもり?」

「僕の翼を折ろうとした時から、もう母親じゃなくなったんだ。」林与一は相変わらず冷淡な表情で、冷酷な言葉を吐いた。

そうだ。

意見の相違で林適人と別れた後も、篠原澄佳は林与一に医学から法律への転向を諦めなかった。それは彼女の若い頃の叶わなかった夢を実現させるためだった。