いずれにせよ、血のつながりがある以上、篠原澄佳は彼の母親であり、それは変えられない事実だった。
彼は篠原澄佳がこれ以上間違いを重ねて、より大きな過ちを犯すことを望まなかった。
「そんなことが可能だと思う?」篠原澄佳は虚ろな目で、呆然と林与一を見つめた。
「自分でよく考えてみてください」
林与一はそれ以上何も言わず、部屋を出て行った。
彼と篠原澄佳の関係が良くないことを、影山瑛志はもう知っているだろう。しかし、なぜ電話で篠原澄佳のしたことを彼に告げたのか、理解できなかった。
残されたわずかな親子の情で、彼女を正しい道に戻そうと思ったのだろうか?
林与一は苦笑した。それはあまりにも非現実的だった。
林与一が去った後、篠原澄佳は一人でベッドに横たわり、昼から夜まで過去の記憶が一コマ一コマ脳裏に浮かんでいた。
彼女と林適人は相思相愛で、その後できちゃった結婚をし、結婚後はとても幸せだったはずなのに、いつからか変わってしまった。
彼女が林適人と落ち着いて話し合うことを拒み、林与一に無理やり法律を学ばせようとし、そして最後まで頑固で、自分の過ちを認めようとしなかったことから……
涙が止めどなく流れ、枕は瞬く間に大きく濡れてしまった。
「もう手を引いてください」
林与一の言葉が再び耳元に響いた。
でも、まだ間に合うのだろうか?
長い時間が過ぎ、篠原澄佳はようやくゆっくりと起き上がり、洗面所で身支度を整えた。
【私を探しに来させた人が誰なのか、今なら教えてもらえますか?】篠原澄佳は深く息を吸い、メッセージを送信した。
相手からすぐに返信が来た。【その方に確認してみないと、教えても良いかどうかわかりません】
篠原澄佳は眉をひそめ、携帯をしまい、もう気にしないことにした。
なんて不可解な行動なのだろう。
篠原澄佳は突然、先日久世澪が去る際に言った言葉を思い出した。「誰かに利用されないように気をつけて。どう死ぬかも分からないわよ」
利用?
篠原澄佳は疑念に包まれた……
影山瑛志は途中ずっと蘇我紬を抱きしめたまま、家まで連れて帰った。
しかし蘇我紬はまだ我に返っていないかのように、恐怖に震えながら影山瑛志の腕をつかみ、尋ねた。「瑛志、動画は消されたの?消されてなかったら、彼女は私を脅すわ」