357 帰国して即逮捕

蘇我紬は言葉を聞いて、心がようやく落ち着いた。

「そういえば、林与一は私たちの計画に参加してくれたのに、まだ結果を伝えていないわね」蘇我紬は突然そのことを思い出した。

道理で、林与一も誘拐された被害者の一人だから、白川蓮の存在を知るべきだった。

「まず朝ご飯を食べてから話そう」影山瑛志は答えずに立ち上がり、蘇我紬を布団から引っ張り出して、洗面所へ連れて行った。

まあいいか。

蘇我紬は黙って影山瑛志を見つめた。

この人、まだ嫉妬してるのかしら?

幸い朝食の時、影山瑛志から進んで林与一に電話をかけた。

電話で、影山瑛志は白川蓮のしたことを林与一に伝え、蘇我紬が何度か話そうとしたが、すべて影山瑛志に遮られ、最後に林与一に「おそらく林奥様も白川蓮に騙されていたのでしょう」と言った。

言外の意味は十分に伝わっていた。

この一言で林与一は深く考えることができるだろう。

林与一は少し沈黙した後、「分かりました」と答えた。

こうして、この通話は終わり、影山瑛志は終始蘇我紬に林与一と話させなかったが、蘇我紬が言いたかったことはすべて林与一に伝えていた。

……

「このクソ女め、俺から逃げ回るつもりか?」太り気味の中年男が飛行機を降りながら、電話をかけつつ罵っていた。

携帯を耳から離したり近づけたりを繰り返し、男の眉間に刻まれた「川」の字が、今の焦りと苛立ちを露わにしていた。

明らかに誰かに電話をかけているのだが、ずっと誰も出ない。

「俺が国に戻って捕まったら、お前のせいにしてやる。死んでもお前を道連れにしてやるからな!まだ電話に出ないのか!」男は携帯に向かって低く吼え、何度も携帯を地面に叩きつけそうになるほど腹を立てていた。「俺から逃げるつもりか?見つけたら終わりだからな!」

男は帰国後、まずホテルに宿泊した。

しかし彼が知らなかったのは、すでに影山瑛志の監視下に入っていたことだった。

そう。

この男こそが、ネット上で蘇我紬のホテルの動画を投稿した人物だった。だが影山瑛志がIPアドレスを追跡したところ海外にあり、これまで逮捕できずにいた。

早乙女燐はこの変化に気付くと、すぐに影山瑛志に報告した。

影山瑛志は画面上の赤い点を観察し、一箇所に留まっているのを確認すると、早乙女燐に命じた。「この男に最も近い警察に連絡を。急いで、逃がすな」