364 離婚協議書

蘇我紬は徐々に落ち着きを取り戻し、きっぱりと頷いた。「はい」

その日、蘇我紬は再び影山家旧邸を訪れた。

一日も経たないうちに、また戻ってきたのだ。

久世澪もネット上の出来事を見ていたが、自分がやったことではないので全く動揺せず、紬を安心させるために言った。「紬、怖がることはないわ。真相が明らかになる時が必ず来るわ」

蘇我紬はその言葉を聞いて、久世澪の言う通りだと思った。

では、何を心配しているのだろう？

「でも、お母さん、林奥様が自殺したんです」蘇我紬は不安を抑えきれなかった。

「紬、私たちがしていないことなら、後ろめたいことは何もないわ。影山瑛志の能力を信じなさい。彼なら必ず真相を突き止めてくれるはずよ」久世澪は紬の手を取り、なだめるように言った。

蘇我紬は久世澪の確信に満ちた表情を見て、頷いた。

そうだ、影山瑛志を信じるべきだ。

林与一が篠原澄佳の住む別荘に戻ると、メイドが心配そうな表情で彼を二階に案内した。「坊ちゃま、奥様が寝室に籠もって、ドアを内側から施錠してしまいました。私たちも入れません」

林与一は足を止めることなく、階段を一度に三段ずつ上がった。二階に着くと、寝室のドアの下から血が滲み出ているのが見えた。彼の心臓が一瞬止まりそうになった。

林与一は数歩後ろに下がり、一蹴りでドアを蹴り開けた。

ドアが倒れると、血溜まりの中に横たわる篠原澄佳が目に入った。手首からまだ血が滴り落ちていた。

林与一は急いで確認し、かすかな呼吸を感じて少し安堵した。

林与一は篠原澄佳を呼びながら、布切れを探して簡単な応急処置を施した。「お母さん、目を覚まして。僕だよ、与一だよ。目を開けて」

「救急車！救急車はまだか！」

林与一は慌てて包帯を巻き終えると、篠原澄佳を抱きかかえて階下へ走った。途中何度もつまずきながら、やっとの思いで救急車まで運び込んだが、彼の激しく鼓動する心臓は一向に落ち着かなかった。

篠原澄佳は救急処置室に運び込まれた。

林与一は救急処置室のランプを見つめ、長い間呆然としていた。

そのとき、はっきりとした革靴の音が聞こえ、背の高い凛々しい男が近づいてきた。

林与一が振り向くと、目を真っ赤にして、目の前の男を嫌悪の眼差しで睨みつけた。「何しに来たんだ？外で愛人を作ったことを自慢しに来たのか？母さんを死なせたいのか？」