370 赤ちゃんは安定している

彼女は涙を流していることに気づいた時、手を上げて涙を拭おうとしたが、手は影山瑛志にしっかりと握られていた。その動きで影山瑛志は目を覚ました。

影山瑛志は目を上げると、蘇我紬の目尻に光る涙を見た。手を伸ばして拭いながら、「どうして泣いているの?辛いの?」と尋ねた。

蘇我紬は彼の疲れ切った表情を見て、きっとずっと休めていなかったのだろうと胸が痛んだ。彼女は強く首を振って、「ううん、もう大丈夫。ただ、あなたが来てくれるなんて思わなかっただけ」と答えた。

「これからはこういうことを隠さないで。もし何かあって、僕が側にいなかったら、もっと後悔することになる」影山瑛志は蘇我紬を抱き寄せ、彼女の額に優しくキスをした。

「気が散るといけないと思って...」蘇我紬も手を伸ばして影山瑛志を抱きしめた。「最近の状況はどう?進展はあった?」

「良い知らせがある。相手は匿名だったけど、前回の調査方法を使って、その匿名者のIPアドレスを追跡したら、やはり海外だった」影山瑛志の声には喜びが隠されていた。

これは確かに最近の良い知らせと言えた。

蘇我紬も嬉しそうに顔を上げて影山瑛志を見た。「本当?それは良かった!海外は調べるのが難しいけど、前回だって早く...」捕まえられたじゃない?

蘇我紬の声は突然途切れ、何かに気づいたようだった。

海外...

前回...

影山瑛志は蘇我紬の話が途中で止まったのを聞き、顔を下げると彼女が眉をひそめているのを見た。「どうした?何か思い出したのか?」

そう言うと、影山瑛志も眉をひそめた。

「瑛志、覚えてる?私たちが最後に白川蓮に会いに行った時、帰る時に彼女が言ったこと?刑務所にいても私たちを安心させないって」

「ああ」影山瑛志は唇を引き締めた。「病室で警察に連行される時に言った言葉も思い出した。僕が自ら彼女を出所させることになるって」

蘇我紬もうなずいた。

おそらく白川蓮は、あの時会う前から最悪の事態に備えていたのだろう。

「じゃあ、彼女を出所させるの?」

「それは警察次第だ。あれだけの違法行為をしておいて、僕の一言二言で変わるわけがない」影山瑛志は微かに計算高そうな笑みを浮かべた。「出所させるどころか、もっと多くの証拠を集めて出られないようにする」