371 ハッカー攻撃

「お母さん、パソコンは本当にウイルスに感染したの?」

先ほど病院で、影山瑛志は久世澪から電話を受け、彼女のパソコンが最近ウイルス攻撃を受け、多くのデータが失われたと聞いた。

「私にもよく分からないわ。パソコンはあまり使わないんだけど、昨夜突然篠原澄佳のあの動画のことを思い出して、USBに保存して篠原澄佳に返した時、元のファイルを消し忘れていたの。開いてみたらウイルスに感染していたわ」

影山瑛志は眉をひそめた。なんてタイミングだろう?動画を篠原澄佳に返したばかりの時に、パソコンがウイルスに感染するなんて。

幸い、パソコンの専門家がすぐに到着した。

コードを入力して確認した後、専門家は言った。「影山奥様、お使いのパソコンのウイルスは後から仕掛けられたもので、その前にハッカーによる攻撃を受けていた形跡があります」

「ハッカー?」

影山瑛志と久世澪は目を合わせた。

「はい、そのハッカーは恐らく発見されたくなかったので、パソコンを攻撃した後にウイルスを仕掛けて、目をそらそうとしたのでしょう」

「そんなことが…」久世澪の目が揺れ、影山瑛志を見た。「じゃあ、あの動画は…?」

「おそらくそのハッカーでしょう」影山瑛志は頷いた。「お母さん、分かりました。恐らくそのハッカーがパソコンから動画を盗んだんです」

影山瑛志は前回林与一に電話して、ホテルの動画について尋ねたことを思い出した。

林与一も否定していた。

そのホテルの動画は白川蓮が誰かに頼んで撮らせたものだった。

つまり、ハッカーは白川蓮側の人間だ。

しかし、そのハッカーはどうやって久世澪のパソコンに篠原澄佳の動画があることを知ったのだろう?

おそらく、それは刑務所にいるあの人物に聞かなければならないだろう。

影山瑛志はしばらく考え込んでから、外に向かって歩き出した。「お母さん、警察署に行ってきます。多分、多くの答えが分かるはずです」

久世澪は影山瑛志の背中を見つめ、何かを思い出したようで、安堵して頷いた。

影山瑛志は早乙女燐に車を運転させ、警察署へ向かった。

彼が会いに来たのは、白川蓮ではなく、橘健一だった。

わずか半月足らずの間に、橘健一は中で元気をなくし、かなり憔悴していたが、顔の傷跡は相変わらず人を怖がらせるものだった。