372 兵は謀略を厭わず

影山瑛志は会社に向かう途中、林与一に電話をかけた。「林与一、事態が解決した。お母さんの動画は私と母が投稿したものではなかった。母のパソコンは動画を渡した時点で、ハッカーに攻撃されていたんだ」

「ハッカー?影山さん、そのハッカーを捕まえたんですか?」林与一の声には明らかに不信感が込められていた。

「犯人は海外にいるが、警察が動いている。すぐに逮捕できるはずだ」と影山瑛志は説明した。

林与一は考え込み、しばらく沈黙した後、「その人から直接聞かない限り、影山さん、こんな下手なハッカーの嘘は信じられません」

そう言いながらも、林与一の心の中の天秤は影山瑛志に傾いていた。ネット上の状況も見ていたし、あの動画のせいで影山家の会社の状況も良くなかったからだ。

影山瑛志も今すぐ信じてもらおうとは思っていなかった。最初は誰もこんな展開になるとは思っていなかったのだから。