これは事件が起きた後、江口希美と蘇我紬が初めて会った時のことだった。
以前は蘇我紬に会うたびに自信に満ちていたのに、今回は彼女と向き合う勇気が少し出なかった。
江口希美は目を泳がせながら説明した。「今日、お爺様が退院して、ここを通りかかったら新しいスイーツ店ができていたので、寄ってみようと思ったの。まさかあなたのお店だとは思わなかったわ」
「江口お爺様のお体の具合はよくなられましたか?今日は開店日なので、これらはプレゼントとしてお持ち帰りください」蘇我紬は微笑んで、レジの画面の数字をゼロにした。
「え?」江口希美は少し戸惑った。以前は蘇我紬の婚約者を奪おうとしたのに、蘇我紬は彼女にこんなにも優しく接してくれる。
蘇我紬は立ち上がってカウンターから出て、スイーツの入った袋を江口希美の手に渡しながら、気にせず笑って言った。「瑛志から全部聞いたわ。気にしないでください。これを受け取ってください。江口お爺様へのお見舞いの気持ちとして」