391 転倒

江口希美の突然の動きに、蘇我紬と江口天真は同時に驚いた。

江口希美は異様な視線に気づき、目を泳がせながら説明した。「蘇我さんにお話ししたいことがあります。」

「ああ、じゃあお爺さんはここで待っているよ。」江口天真は江口希美に微笑みかけた。

蘇我紬は何も言わず、ただ頷いた。

そして二人はカフェの外へ向かった。

江口希美が先に口を開いた。「蘇我さん、私、負けを認めます。私はこれまで自分が優秀だと思い込んで、何でも手に入れられるはずだと思っていました。でも、影山さんのあなたへの気持ちを見て、やっと分かりました。無理やり手に入れた果実は本当に甘くないのかもしれません。私の影山さんへの気持ちは、ただ手に入らないものへの執着だったのかもしれません。」

「別れてから半月も経たないうちに、そこまで考えが変わるなんて。」蘇我紬は意外そうに言った。