第32章:正面から争いが始まる

動画の件は一晩中話題になっていた。

多くの人々の注目を集めていた。

ネットユーザーたちは、最新のゴシップを楽しむ準備をしていた。

結局のところ、この時代、芸能界のスキャンダルは多いが、富豪たちの世界のスキャンダルはまだ珍しい。

みんなが注目する中、林聡明は弁護士からの内容証明を投げつけた。

その内容証明には、時田浅子が誹謗中傷をしていると書かれており、さらに時田浅子を訴えると宣言していた!

人々は火薬の匂いを感じ取った。

この父娘は、正面から争うつもりだ!

この時、斉藤愛梨はもちろん黙っていなかった。

彼女は積極的に広報担当者に連絡を取り、わざわざ会う約束をした。

広報を担当しているのは、かつて雲都の社交界の花形だった女性で、現在は会社を経営し、幅広い分野に手を伸ばしていた。

噂によると、裏表両方に通じており、手段は豊富だという。

斉藤愛梨はコーヒーを持ち、スプーンでそっとかき混ぜていた。

「林奥様」

背後から声が聞こえた。

彼女はすぐに顔を上げた。

「伊藤さん、お久しぶりです。ますます綺麗になりましたね」

伊藤実里はサングラスを下げ、斉藤愛梨の向かいに座った。

「林奥様こそ大美人ですよ!歳月も敵わない大美人。最近は何をされていますか?クラブでカードゲームをされる姿も見かけなくなって、お邪魔するのも躊躇っていました」

「私は毎日家でぼんやりしているだけですよ。伊藤さんのように事業で成功している訳ではありません」

「今回林奥様が私を呼んだのは、林さんの件についてですよね?ご安心ください、すでに手配を始めています」

「結局、家の恥は外に出すべきではないのに、時田浅子はお金のために親子の情を無視して、大きな問題を起こしました。彼女のこの騒ぎで、会社の損失は計り知れません」

「そうですね。でも、結局は若い女の子ですし、調べた限りでは特にバックグラウンドもないようです。私が彼女と交渉します。私が出る以上、林奥様はご安心ください」

斉藤愛梨は、伊藤実里の部下には様々な人間がいることを知っていた。彼女が来た目的は、そんな単純なものではなかった。