「ごゆっくりどうぞ、お邪魔はしません」家政婦はそう言って、退出した。
時田秋染も近づいてきて、このチキンスープを見た。
「藤原家の方々は本当に気が利くわね、チキンスープまで煮込んで持ってきてくれるなんて」
しかし、それでも変わらない事実がある。彼女の浅子は植物人間と結婚したということを。
時田浅子はすでにスプーンを取り、大きな椀一杯を時田秋染に注いでいた。
「お母さん、早く飲んでみて。このスープ、見るからに美味しそう!最近はずっと病院食か出前ばかりで、栄養のないものばかり食べてるでしょ。スープを飲んで体力をつけないと」
時田秋染はスープを受け取り、一口飲んだ。
「うん、本当に美味しい!浅子、あなたも飲みなさい」
「はーい!」時田浅子も一杯注いで、母親と一緒に飲んだ。
......
療養院。
江川楓はいくつかの栄養食をトレイに載せてベッドの横に立っていた。
藤原時央は全く食欲がなかった。
彼の頭はまだ痛み、その痛みで精神的にも弱っていた。
「若旦那様、少しでも召し上がってください。そうすれば体の回復も早くなります」
藤原時央は今、何を食べても同じ味がした。
彼は自分の味覚も影響を受けているのではないかと疑っていた。
無理に二口ほど食べると、箸を置いた。
「これらを下げてくれ。起こしてくれ、リハビリをしたい」
江川楓はすぐに片付け、歩行器を持ってきて、藤原時央の足を器具に固定した。
藤原時央は器具に頼って立ち上がった。
しかし、全身の力を振り絞っても、半歩も動くことができなかった。
江川楓は携帯を手に取り、時田浅子の動画を開いた。
藤原時央は時田浅子という名前を聞いた時、眉間にしわを寄せた。
なるほど、彼女はこんな顔をしているのか。
黒くて豊かな髪が小さな顔を包み、繊細な顔立ちで、とても美しかった。
そして、彼女の美しさには温和で優しい親しみやすさがあった。
藤原時央は知らず知らずのうちに動画を最後まで見ていた。
江川楓はその動画を見せた後、ネット上の時田浅子を攻撃するいくつかのメッセージも藤原時央に見せた。
「若旦那様、若奥様が困っているようです。林家の人たちは本当に厚かましいですね。若奥様をいじめているなんて。若奥様を助けてあげませんか?」
藤原時央の視線が江川楓に向けられた。